第280回
不老不死ならぬ≪元気延命≫
身近な人たちの死が、まるで、わが身が痛くなるほど、
ストレスとショックをもたらすものだ――、
そうしたストレスに関する研究に、
アメリカのワシントン大学のトマス・ホームズ
(Holmes,T.H)と共同研究者による
1967年に調査した「日常のストレスと病気」という
有名な報告書がある――という話の続きです。
前回の表を見ていただければわかるとおり、
親戚や友人の病気や訃報が、
多くの人の精神的なストレスを誘発し、
聞いた人の健康を害するケースが多いわけです。
というわけで、手術や化学劇薬で治らない病気が
たくさんあることが分かってきたからでしょう。
世間にはいろいろ養生論、養生法が注目を集め、
西洋医学一辺倒から、
東洋医学の見直しがひたひたと浸透してきています。
長寿難病蔓延と医療制度破綻の時代を迎えて、
しきりと、心身充実、養身養心といった
≪心身一如の養生法≫が見直されてきたのは
とてもよい傾向だと思います。
僕も僕なりに≪元気延命≫の造語として、
「スローヘルス」「マクロ・エンパワー」を唱えています。
ちなみに、2000年ほど前、中国では≪不老不死≫を求めて、
タオの道=仙人修行=道教というものが盛んになり、
そのために、元気の気を心身に溜める呼吸法、
毒素を溜めない食事法、そして、漢方薬服用、瞑想による
≪養形≫≪養神≫の修行によって
≪仙人≫になることが最高の生き方とされてきました。
もちろん、呪術や水銀(丹)による錬金法など、
いまから考えれば
いかがわしい術法も行われてきたことは感心しませんが、
この東洋に連綿と伝わってきた
≪呼吸法と食事法と漢方薬と瞑想法≫の知恵が、
いま現代人に見直されてきたことは面白い現象ですね。
とくに、元気を取り込む呼吸法と薬食同源の食事法が
≪不老不死≫≪不老仙人≫とは言わないまでも、
心身に生命向上エネルギーを送り込む、
≪元気長寿≫≪心身充実≫の
最高のエンパワー法だというわけでしょう。
もちろん、古代中国から連綿と伝わる
神仙譚の聖人のように
≪気を食べて不老不死の仙人になる≫ことは
不可能な話ですから、
まず第1に、薬食同源の食事で毒素を出し、
元気エネルギーを取り入れる――、
なんとか≪元気延命≫を全うすることが、
僕のような凡人には、
かけがえのない知恵だと考えているわけです。
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