第234回
毛沢東と小説「1984年」の独裁者
≪中国文化大革命≫を象徴するものは、
「壁新聞」に象徴される「漢字熟語」の氾濫ですが・・・、
いま風に解釈させてもらえば、
じつに、アナログ丸出しのインターネット≪BLOG≫が
入り乱れた事件だったといってよいと思います。
その思想宣伝の仕掛け人・毛沢東のみがカリスマとして生き残り、
劉少奇、江青4人組、林彪、そして周恩来、ケ小平らが、
起きつ転びつ権力抗争に踊らされ、
大衆は、ときに純朴に、ときに狡猾に≪快感≫に酔いしれた・・・
これが「文化大革命」の結論となります。
漢字の持つ魔力は
≪言霊メディア≫のパワーといいますか、
プロパガンダ(思想宣伝)の最大の武器であることを
知り尽くしていたからこそ、
いまなお、毛沢東は象徴的カリスマとしての
地位を保っている――と著者は指摘しています。
ところで、今発売中の
「中国文化大革命の大宣伝」(芸術新聞社)という大著は、
読後、未来社会をいろいろと
夢想・空想・想像させてくれる刺激的な本だと思います。
読んだらすぐに内容を忘れてしまうような本とは
一線を画しているなァと、実感しました。
たしかに中国最大の新聞「人民日報」の題字には
毛沢東の≪肉筆・お墨付き≫が輝き、
民衆を睥睨しています。
皆さんも中国に旅行すれば、必ず手にする
人民元紙幣の肖像は毛沢東ですね。
さらに、地方によっては
いまや経済成長の≪お金儲けの神様≫として
崇め奉るところもあるほどです。
毛沢東一人に限らず、
中国人は連綿と≪漢字と言霊≫の民族なわけです。
本書は、この複層した世紀の大事変を、
いわば、インターネットのWEBをめくったり、
3D画像をフリップ(Flip)するかのようにして、
≪宣伝≫という一転突破の記号キーワードで
全面展開する、緻密にして大胆な労作といえるでしょうから、
なんども書きましたが、
アブダクション(仮説導引推理)の楽しみを
十分に楽しませてくれることは間違いありません。
“焚書”による独裁政治といえば,
ジョージ・オーウェルの有名な『1984年』があり、
前回、本書については、
事実は小説より奇なり、実名は仮名に勝る・・・
という面からも評価しておきましたが、
また、最近、村上春樹さんの近過去小説『1Q84』が話題となり、
上下巻1100頁の大著ベストセラーとなっています。
しかし、こちらとは同列には比較したくない作品ですネ。
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