ガンを切らずに10年延命-関根 進

再開!元週刊ポスト編集長の目からウロコの体験秘話!

第232回
文化大革命と≪言霊メディア・パワー≫

1200頁の大著!
「中国文化大革命の大宣伝」を読破した――
その謎解きの鍵は
毛沢東の「中国詩論」の借用・援用・転用にあり――
という話の続きです。

その“毛沢東の思想宣伝熟語(プロパガンダ・コピー)” とは?
本書から抜き出して解説を加えれば、
皆さんも1つ2つ聞いたことがあるでしょうが、
たとえば、次のようなものでした.

・「造反有理」(ぞうはんゆうり)=
謀反を起すことは道理にかなっているというスローガン。
・「四旧打破」(しきゅうだは)
=四旧は旧思想,旧文化,旧風俗,旧習慣。
・「闘私批修」(とうしひしゅう)
=毛沢東思想で私と闘い、修正主義を批判するスローガン。
・牛鬼蛇神(ぎゅうきだしん)
=妖怪変化の意味。反革命修正主義者糾弾の標語。
・「批林批孔」(ひりんひこう)
=表向きは実権派の林彪と“四旧”の孔子を批判するが、
周恩来打倒を狙う江青四人組の陰謀スローガン。
・「実事求是」(じつじきゅうぜ)
=事実に則して真相を探求すること。
ちなみに反対語は「空理空論」(くうりくうろん)」。

しかし、この≪思想宣伝の天才・毛沢東≫の
権謀術数と深慮遠謀を
はっきりと理解できた識者は、当時、日本にも欧米にも、
もちろん中国国内にも少なかったはずです。
こうした古典熟語転用・宣伝コピーの連発で、
幹部党員を“恫喝”するばかりか、
大衆を宗教的な“快感”にも浸らせた才腕は、
≪漢字の国の独裁者≫ならではの
「言霊プロパガンダ(思想宣伝)の魔術師」の
面目躍如だったといえましょう。

さらに、「スローガンの特長は、有機性にあり、
他のスローガンと連結しあっている。(略)
中国の漢方医学に見られるように
全体で有機的に物をとらえる
伝統思想と深くかかわっている」という指摘が慧眼です。

詳しくは、本書を読んでほしいのですが,
今のデジタルな時代から言わせてもらえば、
その典型的な宣伝力が
「壁新聞」「漢字熟語」「詩の朗踊」といった、いわば
“アナログ・マルチメディア・メッセージ”だったわけです。

ともあれ、中国人は、まさに連綿と続く≪漢字の民族≫。
漢字の魔力、言葉の霊力は思想宣伝の最大の武器でした。
文化大革命の根源エネルギーは中国4000年の
≪言霊メディア・パワー≫というわけです。

この書評はもう少し続けます。
なにせ1200ページの労作ですから、
ついつい読後の感想も長くなりそうです。
飽きずに読み進んでください。


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2009年7月6日(月)

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