第230回
1200頁の大著!「中国文化大革命の大宣伝」を読む
とにかく、安っぽい論理を振り回す
“金太郎飴もどき”の新書類が溢れ出ていて、
辟易としていたところに、
ちょっと特筆すべき大著が贈られてきました。
タイトルは「中国文化大革命の大宣伝」(芸術新聞社)
上巻592ページ、下巻600ページ、
全2巻、1200頁の労作です。
作家で評論家の草森紳一さんが
雑誌『広告批評』で1989年1月号〜11年間、
108回の連載したものを書籍化。
広辞苑顔負けの分厚さで
表紙が真っ赤に塗りつぶされた2冊です。
20世紀後半・政治史最大の謎「文化大革命」をめぐる
毛沢東、劉少奇、江青4人組、周恩来、ケ小平ら・・・
権力抗争と深謀遠慮のからくりを、
≪思想宣伝(プロパガンダ)≫という記号キーワードで
一気に解き明かしたノンフィクションですが、
著者の草森さんの中国4000年の文化・文献に関する
学識に驚嘆するばかりではありません。
卓越した筆力によって、
≪紅衛兵≫≪壁新聞≫≪下放≫≪毛沢東語録≫
≪ニクソン訪中≫≪毛主席万歳≫、
そして、≪造反有理≫≪四旧打破≫≪闘私批修≫
≪牛鬼蛇神≫≪批林批孔≫≪実事求是≫・・・
文化大革命で連発された個々の≪記号キーワード≫の謎が
息つく暇もなく、次から次へと、
丸裸にされるのには圧倒されます。
きっと、この大胆にして緻密な手法に
アブダクト(拉致・導引)されたためでしょう。
僕も、3日間ほどかかってしまいましたが(^0^)、
ついに最後まで精読させて貰いました。
文化大革命の謎解きに限りませんが、
中国4000年の複層する歴史とは
単純な二元論やインダクション(induction帰納法)や
ディダクション(deduction演繹法)といった
陳腐な三段論法で解明できるものではなく、
むしろ、矛盾を“陰陽調和”で包み込む一元論といいますか、
アブダクション(abductio仮説導引推理)の手法でないと
太刀打ちできないところがあります。
まさに、本書はアブダクティブな論理展開を駆使した
労作ノンフィクションといえましょう。
僕に読むことを薦めてくれた
友人で作家の山口泉さんの推奨の弁に違わず、
興味の尽きない1200ページでした。
歯ごたえ、読み応えのある本にめぐり逢いたいと
思っている方は、ぜひ、手にとってみてください。
この書評の続きはまた明日。
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