第208回
心のエンパワー――声を出して<いのちを語ろう>!
ガンのような難病患者が“病院の大量劇薬投与”や
“医師の説明責任不履行”“ドクターハラスメント”といった
不当な医療抑圧を受けた場合、その被害から身を守るために、
ただ抵抗したり、あきらめたりするのではなく、
患者さん自身が、率先して自分を<エンパワーする>=
より強く<生命力をアップする>ことが、
ますます大切になって来た――と、
前に、このコラムで書きました。
その<いのちのエンパワー法>には、日ごろから、
玄米菜食を励行する、呼吸法を続ける、
漢方薬を処方してもらう・・・などなど、
いわゆる、東洋の薬食同源の知恵、日本古来の養生の知恵を
励行することが、大事だということも書きました。
僕は、いわゆる化学劇薬に頼るだけでなく、
いわゆる「漢方力」を活用することで、
ガンを切らずに10年――元気に過ごすことが出来たからです。
しかし、ここで、もう1つ大事なことがあります。
ただ医者に頼んで
<西洋薬の代わりに東洋薬を飲めばよい>・・・と
単純に考えるのでは<いのちのエンパワー>は出来ません。
そこで、長い長い人生では、
自分の<心のエンパワー>が大切になってきました。
<心のエンパワー>などというと
難しく聞こえるかもしれませんが、いわゆる、
<他力>ではなく<自力>で人生を決めるパワーを養う――
これです。(仏教用語の<他力>と若干意味合いは違いますが)
では、
≪心のエンパワー≫=≪自力で人生を決めるパワーを養う≫
――には、どうすればよいか?
それは、日頃から、
<自らの物語を創る>=<ナラティヴ・アプローチ>
のクセを付けることです。
ちなみに、精神医学の分野でも
<ナラティヴ・セラピー>=物語療法、家庭療法という療法が
注目されていますが、
≪ナラティヴ≫とは社会学で≪物語性≫。
つまり、ライフストーリーや病気は語られる=
<語り直されるもの>で、それによって、
個人個人の可変力が生み出されるという考え方です。
ですから、ガンのような難病に見舞われたら、
ただ、静かに諦観するごとくに
<自分を見つめなおす>というのでは生ぬるいのです。
≪よーし、なんとしても、いのちを掴んでみせるぞ≫
≪よーし、なんとしても、納得する人生を掴んで見せるぞ≫と
声を出して≪自分の目指す世界≫を語り、
手を使って≪自分の納得いく物語≫を作文する――、
最近話題になっている斉藤孝・明大教授の
「声を出して読もう日本語」のすすめではありませんが、
<声を出して自分を語りなおす>ことが、
即、<心のエンパワー>の基本です。
まえにも紹介しましたが、昨年、106歳で大往生された、
僕の敬愛する塩谷信男医師の正心調息法という呼吸法は、
「ガンが治った、治った、治った」と三唱するものでした。
これは、僕の主治医の帯津良一医師の
<心のときめき>が病気も治す・・・という持論に
共通することだと思います。
いま多くの日本人が忘れかけていますが、
日本伝統の詩歌や物語は、声を出して語りつがれ、
人々は、この物語の叙情にエンパシー(共鳴)しながら、
自分自身の物語を創造し、また次の世代に語り伝えてきました。
これが、本来の≪いのちのエンパワー≫のヒケツです。
子の世代の情操教育の必要性ばかりが叫ばれますが、
それだけではではありません。
いま、親の世代こそが≪心のエンパワー≫を豊かにしましょう。
<声を出して、いのちを掴もう>
<声に出して、自分を物語り直そう>――
きっと、不思議なパワーが満ち満ちてくるはずです。
あなたは、どう考えますか?
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