第204回
不慌張 不放棄 不焦急
前回、「名作にひそむ
涙が流れる一行」という
エンパワーに満ちた本を紹介しましたが、
その明治大学教授・斎藤孝さんが編著の本に、
「子ども版声に出して読みたい日本語 9
国破れて山河あり」
という朗読用絵本があります。
小中学生向けに、李白、杜甫などの名作漢詩を
総ルビ、解説付きで編集したものですが、親子で読めば、
まさに、エンパワー=いのちのパワーが沸いてくる本です。
著者自身も、「漢詩を暗唱して日本語の背骨を作ろう」と強調し、
「漢詩を朗読していると、自然に背筋が伸びてくるから不思議だ。
漢語の響きが気を引き締めて、
身体をまっすぐに立たせてくれる」と述べています。
国破山河在 城春草木深
感時花濺涙 恨別鳥驚心
烽火連三月 家書抵万金
白頭掻更短 渾欲不勝簪
この唐時代の詩聖・杜甫の漢詩を味わうと、
読むものに、じーんと感涙を催させるのは、
<烽火(ほうか)三月(さんげつ)に連なり
家書万金に抵(あた)る>
つまり、<戦乱はいつ終わるのか?
のろしは幾月も続いてうちあげられ、
家族からの手紙は万金に価するほど貴重なものに思われる>
といったあたりの句でしょう。
日本の和歌、詩歌に≪エンパワー≫
(生命力を挙げるパワー)があることは、
前回申し上げましたが、なるほど、
いま学校教育が忘れかけている、
漢詩の雄渾さのうちにも、一人一人の人生を見直し、
≪背骨をまっすぐにしてくれる力≫=
勇気付けてくれるパワーがあると思いませんか?
漢詩の≪エンパワー≫といえば、
最近、面白いことに気づきました。
拙著「ガンを切らずに10年延命」が、中国語版として、
「我要活下去--飛越死亡的20道生命力」(※1)と題して
発売されたことは、前にお伝えしました。
この中国語版のタイトルは「何としても生きる!」といった
力強いパワーに満ちたタイトルで翻訳構成されたのです。
その中に、僕の闘病和歌らしき?モノを三首、載せました。
<この十年 川の流れに 身をまかせ
有り難きかな いのち授かる
癌さんは 敵にあらずして 仲間なり
同行二人(どうぎょうににん)これは悟りか
あわてない あきらめるなよ あせらない
希望にまさる 良薬はなし>
この日本語版の三首が、なんと見事に、次のような漢詩として
中国語版では訳されたのです。
<十年光陰隋著歳月之河匆匆流走
感謝上天賜予的新生命
癌先生 我們不是敵人而是朋友
両人同行 領悟到我不孤単
不慌張 不放棄 不焦急
希望才是最佳的良薬>
どうですか? 漢文風といいますか、
漢詩風にすると、これまた、
じつに力強いパワー・メッセージが伝わると思いませんか?
※1 http://sekine-fighting.blogspot.com/
|