第176回
続・常識からの「脱走力」を蓄えよう
70歳を目前にして、僕自身、若き日々を思い返してみると、
「常識破り」で脱出する・・・
これで何度も何度も危機を凌いできました。
ですから、いくら危機だ、不安だといっても、
ただただ、しり込みをすることはありません。
たとえば、僕自身の「常識からの脱走」とはこんなものでした。
・30歳代のオイルショック不況のころ、
ときどきパリやロンドンに“脱出”して
次なる男性ファッション誌の準備をし、やがて成功させました。
・40歳代はニクソンショックの円高不況のころです。
すでに投資の発想を「中国」に“脱走”させていた
邱永漢さんを訪ね、「円高に克つ」
「悪い世に中を生きる知恵」といった常識破りの企画を連発。
「週刊ポスト」を100万部雑誌に変えました。
・50歳代、バブル崩壊と共に、
会社の幹部と意見が合わなくなって役員辞職。
この頃から出版不況を見抜いて出版界を“脱走”。
いち早くインターネットのコーディネートや
オンライン投資の世界に転進しました。
・60歳代は、空白の10年、
そしてサブプライム大不況の真っ只中です。
悪性の食道ガンで人生真っ暗になりましたが、
惨い手術を断って、大学病院から“脱出”という、
常識破りの「脱走力」で、
なんと奇跡的に10年延命してしまたわけです。
ま、あまり自慢にならない“わが常識からの脱走記”ですが、
危機の時こそ「常識破りの“脱走力”」が
試されていると思っています。
とくに危機のときこそ、目先の損得に囚われて、
「木を見て森を見ない」傾向が強くなりますから、
「マクロからミクロの世界が見える」ように、
日々、人脈作りと勉強を積み重ねておくことは
言うまでもありません。
常識破りのことを言ったり、始めたりすると、
前例や慣習が好きな中高年ばかりか、
日頃から古典を読まない、また、
外国に行って勉強したがらないような若い世代から、
とくに顰蹙を買います。
たとえば、ガンの治療法にしても、
いまの常識は「ガンは切れば治る」
「化学劇薬で叩けば治る」とする、
西洋医学一辺倒を多くの人が信じています。
別に“西洋絶対”と信じたい人はこの常識でよろしいわけですが、
実際には、年々、惨い治療の苦しみの中で、
悶絶しながら死亡する人が増えているわけですから、
もし、あなたが「生身の患者」となったならば、
いまの“医療の常識からの脱走力”は発揮すべきではないか?
西洋医学に限界があるとすれば、
日本人が古来から重用してきた東洋医学の知恵は
大いに見直すべきではないか?
僕は1人の中高年ガン患者として、心底、そう考えて
「複合漢方力の知恵」ということを提唱しているわけです。
繰り返し、繰り返し、このコラムを書いたり、
本を書いたりしているわけです。
とくに不況期になると、
「健全な心は健全な身体に宿る」などと
暢気なことがいえなくなります。
しかし、この大不況期、長寿難病期にこそ、
まず、自分のいのちに「常識からの脱走力」をつけることが、
大切になっている――と思います。
常識破りこそ「寝たきり長生き」ではなく、
「元気で長生き」するヒケツです。
若いうちには分かり難いことでしょうが、
40代、50代、60代になるとジーンと分かってくるはずです。
長寿難病とは、またたく間に、
いまの20代、30代の「明日はわが身」の問題となります。
この大不況期、この長寿難病期こそ、
常識からの「脱走力」を蓄えましょう。
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