第165回
「身心脱落」――帯津医師からの究極のメッセージ
海外に行って、僕の主治医であり、
日本の「ホリスティック医学」の草分けである
帯津良一医師を紹介するときに
「Dr. Monthly Obitsu」=「月刊帯津」
とジョークを飛ばして先生を紹介する――といった話は
まえにもこのコラムで書きました。
その帯津先生の新刊が、またまた贈られてきました。
まさに、毎月1冊、「月刊帯津」のスピード出版です。
今回は、「今日よりも、よい明日」という、
いかにも帯津先生らしさのこもったタイトルの本です。
これまた、読めば心身が優しく洗われます。
爽快にして元気のパワーが伝授されることは
間違いありませんから、早速、内容の一部を紹介しましょう。
ちなみに、この4月から、埼玉・川越にある帯津三敬病院は
新装開院しまして、この新刊を読んでいると、
27年ぶりに新装した新しい病院の治療方針・養生法、
そして、応対や設備のユニークさのみならず、
帯津医師が心新たに目指す、
ホリスティック医学=全体医学の真髄といいますか、
メッセージ・キーワードが分かります。
帯津先生に心酔している読者のみなさんだけでなく、
どうも最近のガン治療や難病治療は
「おかしい」「これでいいのか」と
思っている人は、手にとってじっくりと読んでみましょう。
ズバリ、この本の患者に向けてのメッセージ・キーワードは、
「身心脱落」(しんしんだつらく)という
座禅の用語にあるようです。
別に僕は、禅宗にはくわしくありませんが、
「脱落」といっても人生から落ちこぼれる――といった
マイナスの意味ではなく
禅語の「解脱」(げだつ)=悟りを開くという意味で、
道元禅師が残した言葉のようです。
「一切のしがらみから脱して、心身ともにさっぱりした境地」
になるという意味。
禅語には「心身一如」とか「正念相続」とか、
じつに心身を静めてくれる有り難い悟りの境地の言葉がありますが、
煩悩の真っ只中を徘徊している僕などには、
とてもとても達し得ない難解なものばかりです。
かりに、“凡夫の塊”のような僕が
「心身一如」の悟りを開いたなどと口にすれば、
「アイツは頭がおかしくなったのでは?」と、
友人・知人や大学病院の医師からは顰蹙(ひんしゅ)を買うしょうが、
こうした難解な境地も「帯津節」といいますか,
帯津医師の温かい「説諭力」と「健筆力」にかかると、
とても心地のよいメッセージとして“翻案”され、
多くの読者に安心感、希望観をもたらしてくれるから不思議ですね。
<私の理想の病院は赤提灯がある病院。
仕事が終わった医者と、診察を受けた患者さんが
同じカウンターで、盃を交わす。これこそ、身心脱落です。(略)
人間対人間のつきあいがないところに、
しっとりとした医療は望めません>
いいメッセージです。人情味溢れる病院です。
西洋医学や西洋哲学のように
「心と身体」を二元性に分けて対立・相克させる考えではなく
「心と身体を自然は不可分の一体性」に調和・統合させることで、
いのちの丸ごとのエネルギーを優しく高める――
これが帯津流医学の真髄であり、
新たに建った病院の方針なわけでしょう。
普通、病院へ行くというと、
患者は眦(まなじり)を決して医師に立ち向かう、
まさに「心身」が「陰鬱」となって落ち込んでしまうものです。
それどころか、治療設計も人生相談も帯津医師と
「さしつさされつ」――、なんとも素晴らしい
「身心脱落」に満ちた「いのちの場」だと思いませんか?
この新刊のメッセージを読めば、肩から力がスーっと抜けて、
「今日よりも、よい明日がある」と、
次第に気分が高揚してくるはずです。
これまた、ゴールデンウイーク必読の1冊として、お奨めします。
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