第164回
「いのちと水」の不思議な関係
ゴールデンウイークの休みは、家族サービスだけでなく、
普段は読めない本を読むよい機会でもあります。
僕の知り合いに風雲舎というユニークな本を出している
出版社の経営者・山平松生さんがいます。
先日、その出版社の「水は知的生命体である」
という近刊本が贈られてきましたので、
このゴールデンウイークのおすすめの1冊として紹介しましょう。
清水寺貫主の森 清範さん、工学博士の増川いづみさん、
流水紋制作者の重富 豪さんという異色の組み合わせによる共著で
仏教者、科学者、流水紋制作者の3人が、
「水といのち」の不思議について語り合うという内容です。
水の不思議の本というと、
「○○水は△△病に効く」といったような、
ちょっといかがわしいものが多いのですが、
この本の内容は、ある面、哲学的であり、ある面、科学的であり、
ある面、芸術的である・・・、じつに多角的構成で、
「水はあらゆる生命体とつながるいきものだ」
と、検証しているところが面白い本です。
たとえば、清水寺貫主の森 清範さんは、
清水寺の音羽の滝は黄金水、延命水と呼ばれるとして、
こう語っています。
「清水寺は水が主体です。
なにしろ観音様の化身が水なのだから。」
「水は、宗教的にいうと『清め』、あるいは『再生』ですね。」
「全宇宙のエネルギーが命という形で水の中に宿る。
その命を別の言葉では『仏』といったり、
『神』といったりする――私はそう考えているのです」
これに対して、
<川の流れに墨汁を流して水の模様を和紙に写し取る>――、
流水紋の製作者・重富 豪さんが、
実際に、埼玉県名栗川で写し取った
“両手を広げ、大きな口で何かを叫んでいる”
水神様のような「流水紋作品」を写真掲載しながら、
次のように語っています。
「われながら不思議に思います。
とても優れた画家がある意思を持って描いた
といってもいいぐらいの見事な作品を、
川を流れる水たちが一瞬のうちに描いてしまったのです」
「経験を積みながら、水がちゃんとした意思を持って
流れていることに気づき、水はこの地球にとって
かけがえのない生き物としての役割を果たしているのだと
思うようになりました」
「球体をつくりたがる。曲がろうとする。
そして、命を構成化する。――
これが水の『三大意思』なのですね」
そして、工学博士で水の流体力学研究者の増川いずみさんは、
「生きた食物が健康ないのちを作る」という栄養学の研究から、
土壌、ミネラル、そして水の研究に入った人だそうですが、
「水は高度な知的な生命体である」と結論し、
3つの理由を挙げています。
「1つ目は、水は記憶する能力を持っていることです」
「2つ目は、水はたしかな意思を持っていることです」
「3つ目は、水は生命の誕生に大きく関与し、
あらゆる生命を育み、すべてのものの媒体となっていることです。
水だけが固体、液体、気体と三様に変化し、
地下、地上、空中へと動き、
雨や雪などになって地上に降ってくる。
水は広大な空間を移動することができる生命体なのです」
(以下略)
どうですか?この本は、当コラムでもたびたび触れている
「身土不二」(いのちとその土地や水といった風土は一体である)
という考え方に共通しているところがあり、
なかなかダイナミックで興味深い本だと思いませんか?
忙しい日常生活の中では、なかなか気がつかない、
「いのちの深奥」の別世界へ誘ってくれる不思議な本です。
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