第160回
自分の「使命」を知る!
僕と気の合うジャーナリストの仲間=
異才・中博(なかひろし)さんが、こんど出版した、
新刊「雨が降れば傘をさす
松下幸之助に学ぶ本物の経営」
の話の続きです。
「雨が降れば傘をさす」とは、
「人間力を大切にする」――という、
生涯、松下幸之助が貫いた経営理念の基本キーワードです。
金権強欲経営の蔓延に警鐘を鳴らし、
この人間力キーワードを思い起こせば、
再び、日本人は元気を取り戻せる――、
100年に1度の不況など吹き飛ばせる――、
という経営の神様の側近・中さんならではの「王道経営論」ですから、
ゴールデンウイークに読む一冊に入れてください。
きっと、あなたの事業や将来設計に役立つはずです。
この本の中でも、僕がとくに面白いと思った箇所は
<第4章 自分の「使命」を知る>という章です。
この章では、松下幸之助さんが
「水道哲学」や「国土創成論」といった、
じつに「人間力」に根ざした大構想を旗印とし、
84歳にして政財界の将来人材を育てる「松下政経熟」の創設し、
94歳で大往生された秘話と教訓が語られています。
まだ30代だった中博さんは松下幸之助の側近として、
縁の下から支えたわけです。
僕も、現役の週刊誌の編集長の頃、
松下さんにインタビューする機会があり、
「水道哲学」や「国土創成論」について
じっくり伺った思い出があります。
さて、<自分の「使命」を知る>という章の
サワリを紹介しておきましょう。
<なぜ企業の使命が確立されなければならないのか。
100年に1度の危機に遭遇している今こそ、
産業人、企業人はこの問いに
真摯に立ち向かう必要があるのではないか。
松下さんが使命を求め始めたのも、今日多くの人が
その歴史に学ぼうとしている世界大不況が始まる
1929年のことだった。
一番厳しいときこそ、事業が依って立つ哲学・理念が形成される
最大のチャンスである。(以下略)>
<松下さんは述懐している。
「使命を発表して以来、何か新しい力が加わったように
会社の勢いが変わり、
事業計画が次々と達成できるようになった」
使命の樹立は、企業にとって、
経営の王道の魔法である。(以下略)>
<松下さんは朗々と宣言する。
「松下電器の真の使命は物質の生産に次ぐ生産によって
物質を安価無尽蔵たらしめ、貧乏を克服し、
人々に幸福をもたらすことにある」(略)
このとき、「水道の水は、通行人がこれを飲んでも咎められない。
それは量が多く、価格があまりにも安いからである。
松下電器の使命もここにある」という
“水道哲学“も明示されるのである。(以下略)>
<「この世に無用なものはない」(略)
確かに、どの会社を見てもがんばって業績を上げている社員は、
全体の10%未満である。
しかし、残りの90%の社員はいらないのかというと、
そうでもない。(略)
松下さんの経営魔術は、ここにある。松下さんは、
無用と思われる9番バッター以下の選手に
ヒットを打たせるのである。(略)
「天下に無用なものなし」「松下に無用なものなし」と、
すべての社員を受け入れ、
自らの哲学を納得するのである。(以下略)>
どうですか?読むと不思議なパワーが湧いて来ませんか?
僕は、まえに、このコラムで
「自己有用感」(役に立つことが出来ると感じること)
の持てる人は、「元気で長生き」できると
書いたことがありますが、
その人生設計のスケールをダイナミックに捉えた
まさに”平成の元気本“です。お奨めです。
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