第159回
なぜ平成になって「日本力」が落ちたか?
僕と気の合うジャーナリストの仲間の1人に
中博(なかひろし)さんという異才がいます。
経営の神様といわれた松下幸之助さん
(元・松下電器産業相談役<現・パナソニック>)の側近として、
若き日から、21世紀大阪計画、国有事業の民営化プロジェクト、
自由主義経済プロジェクトなどを担当したツワモノです。
また系列のPHP研究所では「松下幸之助特別プロジェクト」を担当、
PHP研究所のビジネス情報誌「The21」創刊編集長、
「神戸博松下館」「世界を考える京都座会」などの
運営プロデュースもしました。
さらに、退職後は廣済堂出版の社長などを勤め、
いまは、これからの政財界の若き指導者を育成するための
コンサルタント業「中塾」を主宰し、
講演や組織活動に東奔西走しています。
3年ほど前に、中さんは、
僕が発行している会員雑誌「いのちの手帖」第2号に
「94歳まで進化し続けた松下幸之助の生命エネルギー」と題する、
側近でなくては書けない興味深いエッセイを寄稿してくれました。
このコラムの第1495回でも、内容の一部を紹介しましたので、
覚えている読者もいるかも知れません。
さて、その中さんが、こんど、
「雨が降れば傘をさす
松下幸之助に学ぶ本物の経営」
と題する新刊を出しました。
「雨が降れば傘をさす」という題名は、
「人間力を大切にする」――という、
生涯、松下幸之助が貫いた経営理念の基本キーワードです。
なかなか含蓄に富んだ言葉だと思いませんか?
「いま、100年に1度の大不況と日本中が大慌てしていますが、
これは、お金だけが最終目的となり、
リーダーとしての「理念」と「使命」を忘れた
「強欲」経営が大手を振った結果、もたらされたものです。
いまこそ、経営の神様・松下幸之助のホンモノの経営理念を見直せば、
日本は立ち直ることが出来ます」と熱く語って、著者の中さんは、
僕にも1冊、新刊を贈ってくれたのです。
これまで忘れた大事なことを思い出させてくれて、
きっと、新たな経営や事業のヒントが掴めるはずです。
中博さんは熱血漢で話し上手な人ですから、
とても読み易く構成されています。
たとえば「平成になって、なぜ日本のパワーが落ちたか?」
という、面白い視点を挙げて、興味津々な話が始まります。
<この平成の始まり、いや昭和の終わりに、重要な人物が3人
日本の舞台から退場している。(略)
1人は平成元年(昭和六四年)1月7日、
昭和史そのものであると言っていい昭和天皇の崩御である。
もう1人は4月27日に、「経営の神様」といわれた
松下幸之助さんが黄泉の国へ旅立った。
そして最後の1人は、6月24日、
国民的大天才歌手美空ひばりさんが
歌声だけを残して他界した。(略)
平成の世は、そうした国民がシンボルとする、
日本と、日本人を導く中核となる人物の全くいない、
ノッペラボウの時代と化した。(以下略)>
そして、松下幸之助の数々の秘話と共に、
次のような警鐘と提案が明かされていきます。
<当たり前のことを当たり前にする。
「人間の縁(えにし)」を大切にし、王道の経営である。
経営は戦略や戦術にあるのではない。
それを遂行する「人間力」にある。
松下幸之助が創りあげてきた人間力形成の過程を学習することで、
誰にでも本物の経営力が身につく。
今、松下幸之助の「経営の心」「人間力」を学ぶことこそ、
苦境を脱する、大きな鍵になる>
この5月のゴールデンウイークに、
何か心の滋養になる本を読んでおきたい・・・
と思っている人がいたら、ぜひ読んで見てください。
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