第142回
漢方力は、次世代医療のマスターキー(親鍵)?
スローヘルス研究会という患者会を立ち上げて7年ほどたちます。
といっても、僕たちの会は、普通の患者会とは違います。
駆け込みの相談所でもなければ、
ガン対策の示威運動をする会ではありません。
ただ、日頃の食生活を改善して元気に長生きしよう――といった
いわば、食べてお喋りする、気楽な懇談会なのです。
ちょっと、途中から入ってきた人なら、
「これはガン患者の会なの?」といぶかるほど、
ちょっと楽しげなエネルギーが漂う会なのです。
もちろん、僕はただのガン患者であって、
医者でも治療師でもありませんから、
別に、会合で治療法や養生法を押し付けがましく教えたり・・・、
そうしたことはしません。
ただ、いのちの土台は「食」にありと、
いわばマクロビオティックや漢方の考え方に、
少しでも共鳴する方々に声をかけて作った会です。
会員制といっても、じつにゆるやかな集まりですから、
パーティを開いたりすると、
美味しい菜食に舌鼓をうちながら談笑し、
また帯津良一医師の講話を伺ったり、
患者や家族のみなさんが和気藹々と過ごしてお互いにときめいて、
三々五々、お開きということになります。
最近は、小さな食事会は続けていますが
僕も寄る年波で、大人数のパーティは
セッティングするのが面倒になってきましたので、
全国の仲間とは、会員雑誌「いのちの手帖」や
WEB版『週刊いのちの手帖』などを通じて、
情報の交換やエールを送り合っているわけです。
ちなみに、患者であれば、誰しもが、
医師や病院で「温かく扱ってほしい」と願っているわけですが、
現実のガン病棟では、まるで、ガン患者を
「壊れた機械の修理」のように扱う医療が蔓延しておりますから、
会を開いてみて分かったことは、
病院経営や医療財政の逼迫は分かっていても、
もっと「患者の寂しさの分かる医療環境がほしいな!」
と、患者の誰しもが願っていることでした。
というわけで、僕は患者であるとともに、
1人のジャーナリストなので、
いまのガン病棟の現実はひどいにしても、
患者を「壊れた機械」ではなく「人間丸ごと」として診る、
「患者本位の医療」体制に一歩一歩でもいいから近づけたい――、
そのためには、ガン患者が、
ただ手術や抗ガン剤による臓器治療に阿るだけでなく、
人間丸ごとの医療=ホリスティック医療を実践しつつ、
患者のサイドが意識を高めていきたい――、
そうした積み重ねが必要だと、会を進行しながら考えました。
とくに、このポイントについては、
拙著「ガンを切らずに10年延命」の最後に次のように書きました。
<「漢方力」の最大の長所は
人間のいのち丸ごとを見る「全体力」を秘めていることだ。
漢方力こそ次世代医学=ホリスティック医学の扉を開く
「マスターキー」(親鍵)となるはずだ>
もちろん、患者にはそれぞれの治療観、人生観がありますから、
この考え方を強制などいたしません。
会自体も、来るものは拒まず、去るものは追わずの、
自由なかたちですすめています。
もし、僕のささやかな体験と分析から編み出した、
温和思考(スローヘルス)に賛成していただけたら、
また、このコラムを続けて読んでみてください。
きっと、なにかヒラメクものが掴めるはずです。
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