第141回
「ガン難民」ってイヤな言葉ですね
それにしても、近頃、メディアで流行っている
「ガン難民」とか、「ガン駆け込み寺」とか・・・・
ガンと闘っている患者にとっては、
ほんとうに「イヤな言葉」ですね。
いくらいまのガン医療の限界を
微妙に言い当てたキーワードであっても、
ガンを患ったものが聞けば、
「救われる」どころか、
「差別を受けている」言葉としか思えません。
僕も、医療現状を説明するときに、
ときどき、この言葉を使いますが、
わずかな希望を持って闘っている患者の気持ちを暗くする
言葉ともなりますから、必要以外は使わないようにしています。
まえに、このコラムで、
マクロビオティック食養生法の始祖・桜澤如一が
半世紀ほど前にフランス版として出版した
「ガンは人間の仇敵か恩師か」という論文を紹介しました。
内容は、<ガンという禍を転じて人生最高の幸福を得よう!
ガンは「仇敵」と考えるのではなく、わが「恩師」と考えよう!>
という東洋に連綿と続く一元論思想、
そして、それに基づく、東洋人らしい食養思想から
人間の幸福、人類の平和を掴む契機としよう・・・
というものですから、僕などは大いに感銘したものです。
僕も、道を迷い、遠回りをしながら、
この10年、「ガンを切らずに」
過ごさせてもらってきたわけですが、初めの頃は、
「なぜ俺だけがこんなヒドイ運命に泣かなければならないのだ」と
ガンをまさに「仇敵」のように恨んだり、
恐れたりしたものでした。
しかし、やがてホリスティック医学の帯津良一医師や、
漢方の王振国医師から、東洋医学の「薬草、薬食療法」を受け、
また、山村慎一郎さんという食箋指導者から
「マクロビオティック食養生法」を受けることによって、
治療養生の恩恵を受けるだけでなく、
もっと、大事な人間学、いのち学を学ばせてもらいました。
東洋医学とは、西洋医学のように人間をまるで機械のように
臓器修理する医学ではなく、
人間の全体、いのち丸ごとを統合してみる医学であり、
その根本思想は「相克・対立」する世界を二元化して
「差別・格差」するのではなく、
「調和・統合」することによって「幸福と平和」そして
「安穏と平安」をもたらす、
一元的な考え方だということを学んだわけです。
もっと、分かりやすくいえば、
「ガンを敵として激しく戦う」のではなく、
「ガンとは同行2人でいこう」などと思うようになりました。
ガンさんのおかげで、少し頭も賢くなってきたようですし、
「明るく前向きに暮らしている」「ガンを楽しんでいる」などと、
坊さんのように悟りきったようなウソはいいませんが、
昨日の次は今日、今日の次は明日と、
「一日一生」でなんとか過ごしています。
いわば「サンキュー マイ キャンサー」といった軽い心境です。
他人が「ガン難民」と呼んで、
ああだ、こうだと御託を述べるにしても、
自分は「ガン選民」だと、自分なりの“有用感”を持てたときに、
患者には勇気と希望が湧いてくるものではないか?
患者はより主体性を大切にしよう。
僕は、勝手にそう思っているわけです。
あなたはどう考えますか?
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