第135回
「平和で健康な人生」とは?――続・桜澤論文の抜粋
マクロビオティックの始祖である、
桜澤如一が最晩年に著した、「癌は人間の仇敵か恩師か」という
仏版単行本の邦訳紹介の続きです。
これはマクロビオティックの総本山である、
CI協会の勝又靖彦会長からコピーをいただいた、
日本ではあまり目に出来ない貴重な論文です。
<ガンこそ現代科学技術とその犠牲となって
滅亡寸前にある全人類の最大の恩師だ>
<ガンという禍を転じて、
東洋一元論に基づく人生最高の幸福を得よう!
ガンは「仇敵」と考えるのではなく、わが「恩師」と考えよう!>
<食養生こそ二元論で憎しみ合う世界人類に
“平和”をもたらす最高の原理だ>とする、
桜澤の持論である「無双原理」(人生最高の生き方)
を縦横無尽に展開したとても、面白いエッセイであり、
いわば、痛烈なる西洋文明批判の読み物でもありますから、
前回に続いて、さわりを紹介します。
ちなみに、マクロビオティックや
その始祖である桜澤如一について、
ご存じない読者もおられると思いますので、
以下簡単に紹介しておきましょう。
「マクロビオティック」とは、偉大なる生命の術である――、
原理は、古来中国の易経などに伝わる
「宇宙生成・陰陽の原理」に基づく――、
陰陽の相対立する力が互いを補い、
統合・調和に果たすことに人生最高の生き方を見出す――
その統合一元的な生き方を「無双原理」
(他に比べようもない最高の人生原理)とし、
人類の平和、心の安泰を得る基本は
「陰陽調和」に基づく玄米菜食にある――
として、昭和期に日本ばかりか、パリを中心としたヨーロッパ、
そしてインドやアフリカにも渡り、難病患者を救いつつ、
このマクロビオティック食養生法を世界に広めた人です。
内外に桜澤理論にたくさんの弟子が生まれ、
いま、トム・クルーズやマドンナといったセレブが
取り入れたことで、日本に逆輸入され、
日本の女性を中心に人気を集めたわけです。
さて、桜澤如一が最晩年に著した、
「癌は人間の仇敵か恩師か」という
仏版単行本の邦訳紹介の続きです。
「デカルトの二元論もカントの二律背反論も
いかなる問題の解決法とはならない」
「いくら物事を細かく分析しても、
その集大成は無限小の寄せ集めだ。
この無限大絶対界における一元的解決は得られない」
として、東洋の一元論の優越性を強調しています。
もちろん、いまでもそうでしょうが、
日本の学界が常識化している西洋式の二元論の論理を
「それは全く大きな骨折り損のクタビレ儲けだ」と揶揄し、
大胆に否定した内容でしたから、
とくに西欧借り物思想を金科玉条とする、
日本の学者、医者などからは無視されたことでしょう。
そして、文中の圧巻は以下の箇所でしょう。
<人類の幸福――平和で健康でスバラシイ(素晴らしい)人生――
を第1のネライ(狙い)とする欧米各国の同志同憂諸君!
賢明なる諸君はすでに西洋現代科学技術文明の最先端をゆく医学が
対症療法であり、対症療法は根本療法ではないから、
100%信頼して人類の運命を
それに托するコトの出来ないのを知っている。
しかし、それ以外の切り札がない為に
諸君はソレに全力をつくしている。
ここにもう一つの世界がある。
ソレは諸君や、諸君の文明の対蹠(たいしょ)地
東洋である。(略)
科学は分科の学である故に必然的に排他的となり(略)
ついに自滅の道をたどる。
医学は本来、科学ではない。
ソレはむしろ1つの技術であり、生命創造の芸術である。
ソレなのに(略)科学の化面をつけんとしたタメ、
医学本来の使命を忘れている(以下略)>
どうでしょう?
桜澤如一のマクロビオティック最高原理=無双原理って
いまの時代にも「グサリ!」と刺さる医学批判であり、
痛烈な文明批判なのですね。
拙著「ガンを切らずに10年延命」など、
とてもとても桜澤理論に及びませんが、
そうした東洋思想見直しの視点から、
再読してもらうと嬉しいですね。
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