第129回
寝たきり長生き?元気で長生き?
先日、「統合医学でがんに克つ!」という
月刊誌の編集長が取材に来て、
拙著近刊「ガンを切らずに10年延命」について、
あれこれ数奇な体験についてインタビューされたわけですが、
この雑誌は、「がん難民」をつくらないため、
西洋医学の標準治療に他の治療法を加えた「統合医療」を
網羅する専門誌ですが、僕の主治医で、
この世界の先駆けである帯津良一医師の連載「養生塾」や
代替療法を実践する医師の論文や
エッセイが載っているユニークな内容です。
僕のインタビューの内容については、
また改めて紹介させていただきますが、
この月刊誌の「がん治療ニュース・トピックス」という
コーナーに、興味深い小さな記事が目に付いたので、
こちらを紹介させていただきます。
タイトルは「がん患者は『死後の世界』を信じる割合が低い」
という、この長寿難病時代の日本人の「死生観」についての
調査を報告したコラムです。
「健康な一般人と比べ、がん患者は『死後の世界』や
『生まれ変わり』を信じない」・・・という内容で、
これは東京大学の研究チームで、
付属病院の医師・看護婦・一般都民など
1138人を対象に調査した結果だそうです。
このコラムでは詳しい調査データは分からないのですが、
・「死ぬまで身のまわりのことは自分でしていたい」という患者が
9割以上で、医療関係者は3〜4割。
・「死後の世界がある」
一般人=34.6%、 がん患者27.9%――
・「最後まで病気と闘う」・・・
患者=8割、医師=2割――だそうです。
この結果については、
「望ましい死に対する認識の差は、
医師らは終末期の現実や治療の限界を知っているためだろう。
生きている時間を過ごしたいという
患者の思いに応える医療が必要だろう」という
調査分析した医師のコメントが掲載されていました。
こうした患者の意識調査とはとても貴重なものだと思います。
僕が近刊拙著「ガンを切らずに10年延命」で
なんども書いたように、
患者の「生きる希望」は、たしかに、医師が考える以上に
「我侭」といいますか、強いのです。
ある学者が
「患者は永遠に生きると思っているのが間違っている」と、
患者を“小バカ”にするような発言をしていましたが、
これは生身の患者には通用しません。
患者はなんとしても「寝たきり長生き」ではなく
「元気で長生き」したいのです。
ともあれ、問題は、この患者サイドと医療サイドの
「意識の差」=「いのちの格差」を現実にどう埋めて、
より患者に望ましい医療システムが築けるか?
そこが問題です。
現実の病院ではどうでしょう?いまの医療システムでは、
「切る」「叩く」「焼く」の荒治療しか許されていませんから、
手術、抗がん剤、放射線という標準治療の手立てがなくなると
「あなたは余命半年です」「緩和病棟で鎮痛療法を受けて、
静かにあの世に行って下さい」・・・という
“宣告”を受けるわけですから、
ガン患者はたまったものではないわけです。
「死後の世界などまだ考えたくない」=患者VS
「死後の世界を信じて余命を数えよう」=医師・・・
この二元的な治療見解の対立で
ガン病棟が成り立っているとしたら、はたして、
これはほんとうに病院は「いのちの場」といえるのか?
患者は生身です。ガンの正体も治療もいまだまだ不明ですが、
患者にとって「希望こそ良薬 あきらめは毒薬」です。
あらゆる治療の可能性を否定することは、
人生の「毒薬」に等しいことでしょう。
僕は、日々を「あきらめない あきらめるなよ あせらない」
と思いつつ、前向きに過ごしているわけです。
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