第127回
ガンさん、有難う=Thank you,my Cancer!
ことしの映画の最高峰を決める
「米国アカデミー賞」のBSテレビ中継を見ていたとき、
なんといっても、印象に残ったのは、
短編アニメーション賞を「つみきのいえ」という作品で受賞した、
監督の加藤久仁生さんの挨拶でした。
加藤さんは「サンキュー アカデミー、
サンキュー マイ オールスタッフ・・・」と、
じつにシンプルな英語のフレーズを並べて感謝の意を評したので、
皆さんの中でも、ほほえましく、
また、印象深く感じた人は多かったと思います。
そして、この癒しに満ちた「手書きアニメ」の受賞に、
加藤さんが『サンキュー マイ ペンシル』といったのは、
じつに心のこもった言葉だったと思います。
自分の努力を実らせてくれた
最高の“サポーター(同伴者)”として、
加藤さんは愛用する「鉛筆」に感謝の意を表したわけですが、
人生の中で、こうした「よき同伴感」を持てる人って、
苦労はあっても幸せだと思います。
ところで、ガンの闘病や病気の克服も、
患者自身が、“よき同伴者”を持っていると実感できれば、
苦労や努力が実って、症状も改善されるケースがあるものでしょう。
まえに患者も、ただ落ち込むのではなく、
「自分は役に立っている」「自分は愛されている」と
同伴者からの「有用感」「有用愛」を感じた人は、
回復力が早いと書きましたが、
少しでも、感謝の気持ちが持てるように、
自分の生活の場を築けるように、
人生の舵取りをうまくやっていくことが、
「ガン延命力」ならぬ「人生元気力」の原点だと思います。
僕などは、ガンになる10年前は、
暴飲暴食の無軌道な生活が当たり前だ、
ガンは切ったり、化学薬を飲めば治る・・・と信じていました。
しかし、長い闘病の間に、
ガンはそんな「柔な病気ではない」、
ガンはそんな「いい加減な発想で許してくれるものではない」
と分かりました。
いや、分かるというより、
「人生観について、ガンさんから教えられる」ことが
たくさん出てきたわけです。
このコラムで、「ガンは身体だけでなく、精神性や霊性の
人間の“いのち丸ごと”で治すものだ」とする、
全体医療(ホリスティック医療)が、
未来の医学の姿だということを、
僕の主治医である帯津良一博士から学んだことは、
まさに、目からウロコの貴重な体験でした。
帯津先生は、僕の体だけでなく、頭も賢くしてくれた、
まさに「よき同伴者」「人生の教師」
となっていただいたわけですが、
幸運にも「切らずに10年延命」という、
ガンとの付き合いの中で、「ガン」が発する警告とか、
「ガン」そのものにも愛着といいますか、
「感謝」して過ごことができるようになりました。
いまは「ガンと激闘する」のではなく
「ガンと仲良く」しようという
生き方の賢い患者さんも増えてきましたが、
まさに、冒頭のアカデミー賞・短編アニメ賞受賞者の
加藤監督ではありませんが、
「サンキュー ドクター 帯津」はもちろんですが、
「サンキュー マイ キャンサー」=「ガンさん、有難う」というのが、
いまの僕の心境なのです。
僕は四字熟語でガン闘病法や人生の指針を表現することが好きで、
ガンは「久病良医」で克服しよう、
ガンは「同行二人」でいこう・・・
と、このコラムでも良く書いてきましたが、
あまり哲学的に難しく考えることもないでしょうね。
「サンキュー マイ キャンサー」=「ガンさん、有難う」・・・という
「よき同伴者」の気持ちを持って
長い長い闘病の手立てを探り、前向きに過ごすことが、
これからの長寿難病時代のガン克服の「逆転の発想」であり、
賢い患者の「ガン延命のヒケツ」だと思っています。
Thank you,my Cancer!
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