第114回
言葉のドクハラ
「ドクハラ」=ドクターハラスメントという、
患者イジメの造語を発案して、医療のあり方、
とくに医師サイドのコミュニケーションの悪さに
警鐘をならしたのは
僕が敬愛した敏腕の外科医・土屋繁裕さんでした。
僕がガンになった10年ほど前に、
土屋医師は癌研病院を辞めて、
日本で始めてのガン患者専門相談所=
キャンサーフリートピアを創設して、
テレビや新聞で盛んに警鐘をならしておられましたが、
残念なことに、過労のために5年前に他界されてしまいました。
いま、キャンサーフリートピアは
奥さんの広見さんが経営を受け継ぎ、
後輩の医師・三好立さんが担当医師として相談にのっています。
しかし、最近は患者の苦しさや寂しさに応える医師、
患者に対する優しいコミュニケーションを語る医師が
少なくなっているのは気になっています。
診療報酬の引き下げ、医療財政の削減・・・といった
医療制度の改悪が、病院経営や医師ノルマを悪化させて、
それどころではないよというわけしょうか?
ますますこの医師と患者のコミュニケーション不足は
「患者漂流」や「ガン難民」を生み、
多くのガン患者に「生きる希望」を失わせているのではないかと、
心配をしているわけです。
さて、先日、「週刊朝日」を読んでいたら、
「がんばらない」という著書で有名な鎌田實医師が
「がんは言葉で治療する」というエッセイを書いておられました。
「患者や家族に “余命3ヶ月”だ」
「もう積極的な治療は出来ない」などと宣告する
無神経な医師が多いことに警告をされ、
「医師の言葉ひとつで患者や家族は天国へも地獄へも行く」
と書いておられました。
医師の優しい一言、丁寧な説明こそが、
患者や家族に希望をもたらすわけですから,
さすが、患者の寂しさが分かり、
患者や家族に評判のよいお医者サンなのだなァと思いました。
ちなみに、
「患者の寂しさの分かる医師」が理想の姿だというのが、
僕の主治医でホリスティック医療の権威である
帯津良一医師ですが、
昔、元気な頃の土屋繁裕医師こんな投書が来ているんだよと
が見せてくれたことがあります。
ある抗ガン剤治療医に罹った
膵臓ガンの患者さんからのものでした。
膵臓ガンというと5年生存率が5%という難しいガンですが、
それでも治療・養生の工夫によっては、
回復の可能性、希望のある養生生活は送れるわけです。
ところが、やっと予約を取って診察を受けた患者に
その医師が「手の施しようがありません!
好きなことをやって過ごしなさい!」と見放したというのです。
土屋医師はどんな患者さんにも
1/100、1/1000の可能性はあるわけですから、
自分の治療法からはみ出した患者に
生きる希望を奪うような発言をする医師は、
どんなに名医と騒がれていようが
ドクハラ医師ではないか?というのですね。
いま、医療制度が崩壊の中で
ガン患者は「患者漂流」「ガン難民」の立場に置かれています。
しかし、患者は「ドクハラ」に負けてはいけません。
患者との「言葉」=「コミュニケーション」を大切にし、
少しでも「いのちの質」を考えて実践してくれる医師も
探せば、まだまだおられるわけですから、
患者と家族の「あきらめ」は禁物なのです。
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