第94回
ガンの痛みの種類もさまざまだ
最新号「いのちの手帖」第5号の藤野さんのレポートは
一挙22ページに及ぶもので、
冒頭の部分は、このコラムでも何度か紹介してきました。
「イザというとき知っておくべき鎮痛療法と緩和ケアの新知識」の
各論部分についての抜粋紹介の続きです。
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●痛みの種類、性質、段階
ガンの痛みがおこるのは、ガン細胞が増殖して、
まわりの正常細胞を刺激したり、
圧迫したりすることによっています。
また、ガンのために正常細胞に炎症がおきたり、
正常細胞が破壊されたりすると、
痛みをおこす物質が分泌されて末梢神経を刺激し、
脳に痛みを伝える結果になります。
さらにガンが骨に転移すれば、骨がもろくなるか、
溶けて変形するか、新しい骨ができるかして痛みます。
ガンには肉腫もいれて200種という種類があり、
個人差もあるので、痛みのあらわれ方も感じ方もさまざまです。
また、ガンの増殖の仕方や転移の仕方と、
発生部位や転移した部位によって痛みの出方が異なります。
一般に痛みがでやすいガンとして、
すい臓ガン、乳ガン、子宮ガン、胆のうガン、
大腸ガン、肺ガンがあり、
骨盤に転移しやすい前立腺ガンでは、
進行につれて腰や腕や足の痛みがひどくなります。
(略)専門家は「ガンによる痛み」と、
「直接的にガンによらない痛み」を区別します。
「ガンによる痛み」は、すい臓ガンや胃ガンでは腹部に、
直腸ガンや子宮ガンでは骨盤内にというように、
腫瘍のできた個所にあらわれます。
また「直接的にガンによらない痛み」は、
頭痛、腰痛、神経痛、首や肩の痛みなどとしてあらわれます。
「ガンによる痛み」のほうは、
病状の進行につれて重くなりますが、
「直接的にガンによらない痛み」は、
治療経過とともに軽くなることが多いでしょう。
ガンの痛みの40パーセントが、
ガンを直接の原因とする痛みとされており、
ほかに、からだの衰弱と長く寝ていることが重なってできる
「褥瘡」(じょくそう=床ずれ)や「便秘」と、
治療にともなう痛みが10パーセントを占めるそうです。
そして、この両方の痛みをもつ患者が、
のこりの50パーセントを占めています。
原因のわからない痛みや、精神的な不安による痛みもあり、
これらのばあいは、全体的な緩和ケアが必要になります。
さらにべつの痛みとして、
神経に異常が生じたためにおこる痛みがあります。
これは感電したときのような、ピリピリした鋭い痛みで、
衣類がちょっとこすれたときや、
ドアを閉めたときの音や、
空気の動きにさえ感じるような痛みです。
このような速くて鋭い痛みを伝えるのは、
太い「Aデルタ線維」のほうで、
この「神経因性」といわれる痛みには、
複雑な原因がからむことがあり、
「モルヒネ」のようなオピオイド鎮痛薬は
効きにくいとされています。
このほか吐き気、息苦しさ、だるさや、不眠、不安、
抑うつのような症状も、患者にとっては重要な問題なので、
それぞれに対応が必要なことはいうまでもありません。
そこで痛みの具体的な治療法にはいるまえに、
医療側がどんな基準で、痛みの治療法を選択するかを
理解しておくことにしましょう。
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