第93回
「痛みを耐えることに、なんの意味もない」
スローヘルスの会の仲間で、僕の先輩にも当たる
藤野邦夫さんが、NHKのラジオ深夜便やテレビの
報道ステーションに出て以来、こちらのサイトにも、
多くの読者から問い合わせが来ています。
最新号「いのちの手帖」第5号の藤野さんのレポートは
一挙22ページに及ぶもので、
冒頭の部分は、このコラムでも何度か紹介してきましたので、
「イザというとき知っておくべき鎮痛療法と緩和ケアの新知識」の
各論部分について、いくつか紹介しておきたいと思います。
*
●「いのちの手帖」第5号(一挙22ページ)
<最前線医学情報――あなたは「ガンの痛み」に耐えられるか?
――イザというとき知っておくべき
鎮痛療法と緩和ケアの新知識――>
(略)患者の側で知っておくべきいちばん大切なポイントは、
「痛みを耐えることに、なんの意味もない」ということです。
それどころか痛みをがまんしていると、
精神的に悪い影響があるだけでなく、
神経が敏感になって痛みがさらに広がったり、
強くなったりするという悪循環におちいります。
元気なときなら、少しの痛みをがまんしても問題はないでしょう。
(略)さらに、2007年4月から施行された「がん対策基本法」で、
患者は痛みの治療をうける法的権利をもち、
医療側は痛みを治療する法的義務をもつことになりました。
これでようやくガン患者の痛みをとり、
QOLを高めて病状を好転させようとする、
医療先進国の基本的な治療姿勢に近づいてきたわけです。(略)
これまでも、患者が積極的に治療に参加するほうが、
治療効果があがるといわれてきました。
ペインクリニックについても、おなじことがいえるわけで、
患者に積極的に参加する姿勢があるほうが効果があがります。
そのためには痛みを訴えるだけでなく、
吐き気、眠気、便秘のような、
ふだんと変わった症状がおきたときに、
いちいち医療側に的確に伝えなければなりません。
つまり、医療側とこまやかな意志の疎通をはかる努力が
必要であり、主治医に無断で、
べつの薬を服用したりすることも厳禁です。
しかし、なにより大切なのは、
自分の痛みを的確に医師や看護師に伝えることでしょう。
この痛みの伝達が意外にむずかしく、
とくに食道ガンや喉頭ガンで声がでなくなった患者では、
筆談が必要なので、さらに困難になるようです。
ここでポイントになるのは、
(1)「どこが痛いか」、
(2)「いつから、どんなふうに痛いのか」、
(3)「どれくらい痛いのか」を、
正確に伝えようとすることです。
このとき自分が感じている痛みを率直なことばで話せば、
相手にもっとも的確に伝わるでしょう。
たとえば「ズキズキする」
「刺されるように痛い」「おろし金でこすられるようだ」
「ハンマーでたたかれるようだ」「締めつけられるようだ」
というような実感的な表現が適切です。
痛みで夜も眠れないばあいでも
「痛みで眠れないこと」をしっかり伝えなければ、
睡眠剤を処方されるだけでおわってしまい、
なんの解決にもならないでしょう。
いまでは、痛みの性質と段階を5段階や10段階で評価する
「チャート」や、痛みについて聞きとる聞きとり方をまとめた
「プロトコル」をもつ病院がふえてきました。
それらと診断の結果をあわせて、
緩和ケアが実行されることになります。
しかし、患者の側もえたいの知れない痛みに
疑心暗鬼になっているより、痛みがおこる原因と、
痛みの性質について知っているほうが、
プラスになることはたしかでしょう。
痛みの原因を理解しているだけで、
痛みが和らぐことさえあるそうです。
そこでガンの痛みの種類や段階と、
治療基準について考えてみましょう。
*
続きは、また明日。
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