第88回
人生は爆発だ!――50年ぶりに拝聴した「名講義」
「日々、心にトキメキの小爆発を起こす」・・・
この何気ない“養生法”がガンに負けない大切な心得だ、
これが下手な薬にまさる「最大の良薬だ」というのが、
僕のガンの主治医であり、
ホリスティック医学(全体医学)の先駆けである
帯津良一博士の持論です。
この話は、すでに何度も書いてきました。
太陽がまぶしく差し込む朝、
空気がすがすがしく澄んでいる朝、
近くの神社の森や小川の水辺をぶらぶらと散歩していますと、
なんとなく、気分がウキウキとしてきて、
体の不調など忘れてしまうことがあるものです。
今日はいいことがありそうだナァ・・・、
心の奥から、ボッボッと小さな爆発の泡粒のようなものが
湧き上がってきます。
なにやら、身も心も小躍りしたくなることがあります。
これが、心のトキメキでしょう。
ほんとうに、人間のいのちって不思議なものですね。
少し気温が下がったり、湿度が上がったりするだけで、
気分がよくなったり、悪くなったりします。
ちょっと理屈っぽくいわせてもらえば、
人間の体温は1度下がるだけで、
免疫力が40%も落ちるというのですから、
何気ない日常のウキウキや、トキメキの爆発が
たしかに、鬱々とした不安など
一瞬、吹き飛ばしてくれるときがあるのでしょう。
きっと、こうした“心の小爆発”の繰り返しが、
数珠(じゅず)のように繋がって、
僕は「ガンを切らずに延命」できたのではないか?
ウツウツがきたら、いつか、必ず、トキメキがやって来る・・・
これは人間が持つ、いのちの特権なんだナ、
だから、僕たちは生きることに「爆発したがる」んだ、
有り難い気分だと、最近はしみじみと思うようになりました。
さて「トキメキは最大の良薬である」・・・
この「心の小爆発」という言葉ですが、
どうも、別に、これはガンになってからではなく、
僕の少年の頃、どこかで聞いたといいますか、
誰かに教わっていたような気がしてなりませんでした。
どうしても思い出せず、いつも心の奥にひっかかっておりました。
ところが、先日、ひょんなことから、
50年ぶりに、その謎が解けたのです。
僕が高校生の頃、「大河原忠蔵」さんという、
なんとも立派な名前の国文学の先生がおられました。
大柄でとても笑顔がふくよかで、
バイロンの詩
「ヴィオロンのため息の、ひたぶるにうらがなし」や、
島崎藤村の「千曲川旅情の歌」を
透き通るような声で浪々と読んでくれる先生で、
授業では、必ず「人生とは何か」という命題を生徒に出して、
僕たちの煩悶についても一緒になって語り合うものでしたから、
まさに、心にズシンと残る恩師であったわけです。
出会いについての細かい経緯は省きますが、
とうとう、この1月の末に、お宅に伺う機会を得ました。
84歳にして、風貌も変わらず、にこやかな笑顔も変わりません。
懐かしいだけでなく、とても嬉しく思いました。
お宅の応接間に座るや、
まるで50年の歳月の壁など吹き飛ばすように、
あの先生の浪々とした講義が始まり、
僕はうっとりと聞き入ったのです。
開口一番、「人生とは何か?」、
「人生は爆発!」だ・・・という、
あの懐かしい名調子が先生の口から飛び出したのです。
ああ、これだ、これだ!
僕に、トキメキ=「心の躍動」「心の爆発」「心の元気」の
素晴らしさを教えてくれたルーツは
大河原さんにあったのだと、思い出したのです。
|