第69回
久病良医
古来、中国には
「久病良医(きゅうびょうりょうい)」
という4字熟語があります。
長く患った患者こそ優れた医師になる・・・という意味で、
これは、昔、中国医学界の重鎮で、
僕の恩師である長春中医学院大学の元教授・袁世華さんから
教わった格言ですが、
「壊れた機械の修理マニュアルのように標準化」され、
「医師の専門分野が細分化」された、いまの西洋医学の世界では、
複雑な病気を全体的に診る医師がいなくなりましたから、
ただ「メスさばき」の上手な外科医にかかればよい・・・、
というわけにはいかないと思います。
軽い風邪や腹痛、切り傷のようなものは別にして、
ガンのような慢性疾患といわれる難病は、
いのち全体のバランスを崩すことによって起ると
考えられますから、
まず、医師の選択は病院任せにするのではなく、
自分の長い闘病体験から推し量って患者自身が決めていかないと、
ほとんどの場合、的確な解決策が返ってきません。
たとえば、2年前に、僕は内視鏡検査の結果、
胃に原発潰瘍が4個発見され、外科医からは
「胃ガンだから切りなさい」といわれたことがあります。
しかし、別に痛みはないし、
どう考えても胃ガンになるような
暴飲暴食生活もしていなかったので
おかしいナと思って、帯津医師の処方の漢方せんじ薬と
漢方複合薬の天仙液を飲み続け、さらに、
やはり王振国医師の開発した天仙栓(てんせんせん)
という座薬を使いました。
(*中国の座薬は、日本のものより効き目がキツイので、
半分の量にしました)
そうしたら、3か月後の検査では、潰瘍は消えてしまい、
快食快眠快便で、すっかり調子がよくなってしまったのです。
僕は、ガン以前に、もう1つ、椎間板ヘルニアの持病があり、
季節が寒くなったりすると第一腰椎の神経がさらに圧迫され、
腰や足の痺れ、胃腸の下痢などが起ることがよくありました。
このときの「胃潰瘍騒動」も、
どうやら椎間板ヘルニアが原因のようだったのです。
いまの西洋医学の縦割りシステムでは、
この類の体の全体の不調を総合的に診る医師はいません。
この場合、消化器外科医、消化器内科医、
整形外科医などとたどっていっても、
大抵の場合、内視鏡検査の潰瘍写真を見て、
「胃ガンだから切りなさい」などと
診断されてしまうこととなるわけです。
はっきりいって、ガンのような
複雑な老化病を全体的に診ることでは、
漢方医の方が一日の長があり、外科医中心の手術至上主義で
「割り切ろう」という発想には限界があります。
昔、僕の敬愛する医師に土屋繁裕さんという
敏腕な外科医がおられました。
「関根さん、メスでお腹を開けたらガンではなかったという、
“切られ損”の手術って結構あるんですよ」と、
土屋医師から教えられ、まさか!と思っていたのですが、
もし、このときに胃を切られていたら、
僕も“切られ損”の苦痛で体調を崩し、
いま、こうして元気にhiQの原稿など書いていられないわけです。
ちなみに“切られ損”のガン手術だと分かった場合、
医師は「ガンがなくてよかったですね」というそうです。
患者の方はと言いますと
「有難うございます。先生のお蔭です」
と大抵が喜ぶそうですから、
ガン病棟の世界では、常人が考えたら、
おかしなやりとりをしていることになります。
別に医師が偉いの、患者が偉いのと・・・と
威張り合う話ではありません。
ガンのような複雑な病気と折り合いをつけながら、
元気で長生きを続けるには、
「久病良医」=長患いをした患者ほどよい医師である=
の心構えが必要だ――と、
僕はますます痛感しているわけです。
ぜひ、皆さんもこの四字熟語を心に覚えて、
ガンとうまく折り合っていただきたいと思っています。
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