第68回
「強い抗ガン剤」は患者を救うのか?
「ガン患者が見捨てられる」
=患者漂流、ガン難民の話となると
必ず「“ドラッグ・ラグ”(薬の遅れ)」
という記事や主張が出てきます。
「日本は最新抗ガン剤の認可で最も遅れた国だ」
「アメリカで使われている最新抗ガン剤が日本では使えないために
いのちを落とす患者がたくさんいる」
「認可を受けていないために
保険適応外となり莫大な金額がかかる」
「アメリカで承認されている抗ガン剤のうち、
日本では30%ほどしか認可されていない」
「欧米との発売時間差は2.5年だ」
「日本は最も治験が遅れた国に成り下がった」
「一刻も早く、もっと強い抗ガン剤を認可しろ」
という考え方です。
たしかに、僕の回りでも、大半の患者さんが、
最新の抗ガン剤の認可を心待ちにしています。
しかし、何度も、このコラムで書いているように、
化学抗ガン剤の大半が実際には「毒薬」と分類され、
「20%」程度の奏功率で認可されにすぎず、
また患者はその激烈な副作用でいのちを縮めるケースが多い・・・
ということは、あまり学会やメディアで公表されません。
いまの抗ガン剤治療と認可の基本的問題点は、
ここにあると、僕は思っています。
半年前にも、僕と同年輩の前立腺ガンの患者さんが、
手術と抗ガン剤治療を続けていたのですが、
肺に転移して、一時、最新薬として話題をまいた
イレッサの少量投与を続けていたのですが、
むしろ、その副作用が禍して、いのちを落としてしまいました。
最新抗ガン剤の結果が、これでは困ります。
とにかく、効くと喧伝される抗ガン剤には副作用がつきもので、
要はメリット(抗ガン効果)とデメリット(副作用)のどちらが
大きいかという問題が付きまとうわけです。
多くの患者が「強い抗ガン剤はガンを治す」・・・という
“妄想”に取り付かれていることに問題はないのか?
僕は、周囲のガン患者が副作用に悶絶して
最期を終える姿を見ていると、
つくづく、抗ガン剤=化学劇薬のメリットより、
デメリットが大きいことに慄然としているわけです。
はたして、薬を製造し、販売する会社や
それを大量投与する病院と一緒になって、
患者が「アジアで最も治験が遅れた国に成り下がった」
「一刻も早く、もっと強い抗ガン剤を認可しろ」
と主張しているだけで よいのだろうか?
とても心配です。
たしかに、ガン患者は藁にもすがる思いで、
新薬の登場を願うわけですが、化学薬=毒薬という
基本的性格を知らずして、
ただ「欧米の認可薬だからよい薬だ」と妄信すれば、
はたして、いのちが助かるのでしょうか?
いろいろ考え方があるでしょうが、
“切らずに”また“抗ガン剤も休止”して、
延命10年――ガンと折り合ってきた身からすると、
化学抗ガン剤に関する
「“ドラッグ・ラグ”(薬の遅れ)」の是正は、
諸手を挙げて賛成は出来ません。
極論ですが、いまの医療厚生行政では、
「化学抗ガン剤の“ドラッグ・ラグ”(薬の遅れ)」
を解消させると称して、
むやみと役人や腫瘍科医の数を増やせば
患者のいのちを救うどころか、
ますます医療財政負担を増やすだけとなるのではないか?
こちらの方も心配になってきます。
これからの医療制度は、ただアメリカやドイツの物真似をすれば
よいというものではありません。
「“ドラッグ・ラグ”(薬の遅れ)」について論議するなら、
限界性が露になった西洋医学一辺倒ではなく、
そろそろ、代替療法や漢方薬を含めての治験や
医療の統合体制をどうするか?
この長寿病弱国・日本の実情に合わせた医療システムつくりを
考えるべきだと、僕は思っています。
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