第53回
ガン対策=大切なのは退院後!
2人に1人がガンになる・・・というわけで、
最近では、盛んに、がんセンターや大学病院の有名医師、
また、著名なガンエッセイストなどが出席して早期検査、
早期発見を奨めるガン対策記事がマスコミにたくさんでています。
これは「転ばぬ先の杖」で大変よいことですが、
逆に見れば、ガンと宣告されても
「決定的な治療法がない」ということを、
証明しているような記事となってしまいます。
いまガンと闘っている患者は300万人といわれますが、
すでにガンになってしまった患者にとっては、
ほとんど役に立たない。
これでは、抜本的なガン対策にはならないわけです。
僕は、ガン10年を闘って、
途中、いろいろと再発転移の危機を乗り越えてきましたが、
外科の医師は、
ほとんど「手術は完璧だ」「手術はうまくいった」と、
医術の成果を患者に告げて、患者に退院を促します。
まえにも書きましたが、僕を担当した食道ガンの外科医は
「手術すれば、2週間後のゴルフも出来ますよ。
なんでも好きなものが食べられますよ」などと言って
手術を迫ってきました。
いまから思えば、患者の無知に付け込んだ甘言、
いやウソ八百です。
たしかによほど、未熟な医師にかからなければ、
メスさばきは無事に終わることになりますが、
ガンとは、何度も書きますが、
局部を切り取っただけではすまない、
いわば、突発性の老化病ですから、
切り傷のように
「メスさばきがよい」=「ガン完治」とはいかないはわけです。
ここにガン患者と外科医の大きな「勘違い」がありますから、
あれだけ医師が「完璧だ」といったのに、
「どうして再発して死んでしまうのだろう?」
という悲劇があいもかわらず続くことになります。
もちろん、冒頭に挙げたように、
ガンの権威といわれる医師たちのシンポジュウム記事にしても、
実際にガンと奮闘している患者にとっては、
ほとんど役に立たない話となってしまうことが多いわけです。
ですから、マスコミのガン対策記事や広告も、
これだけガン患者が増え、
また、死者が増加しているわけですから、
より真剣に退院後の闘病法について、触れるべきだと思います。
これがガン医療の本来の使命でしょう。
退院後の相談にのっても医療点数にはなりませんから、
「退院してしまえばお役目ゴメン」ということで、
どの病院もなんとも患者に冷酷なわけです。
一般の商品販売ですら、
アフターサービスや保障制度があるわけですから、
とくにガンのように万民のいのちを保全しなければならない。
医療事業も、退院後のアフターケアを抜きにして、
本当の「ガン対策」はないと思います。
ま、そうした制度の問題は、
一朝一夕に変えられるものではないようですし、
実際にガンと闘っている人が
患者本位の医療制度改革を待っていても
こちらの寿命の方がもちませんから、
ガンに関しては、とくに退院後の治療設計をどう計画するか?
ここが「延命出来るか」「出来ないか」の
分かれ道となってきます。
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