第39回
ガン切るべきか、切らざるべきか?
ガンといわれると、なぜ外科に回されるのか?――、
ガン手術の長所と短所をしっかり知っておく必要がある――
という話の続きです。
僕の敬愛する外科医の土屋繁裕医師の名著は、
ズバリ、タイトルが、
「このガン、切るべきか、切らざるべきか」(NHK出版)
さらに、この著書では、普通の外科医がなかなか喋りたがらない、
手術治療のマイナス面についても分かりやすく、
土屋医師が明かしています。
ガンの患者なら知っておくべき「手術の長所・短所」について
解説した部分をここでは紹介しておきましょう。
(詳しく知りたい人は本書を紐解いて下さい)
1.≪手術の延命効果はどれくらいか?≫
「実際は、どんなに上手に取ったつもりでも(略)
見えないミクロのガンは、取り残しているわけです。
だから、手術を受けた患者さんは全員が治らないのです。(略)
時間が経てば検査で分かるマクロのガンに変身し、
再発してしまいます。(略)
仮に手術前のガン量が25グラムで、
手術で24グラム取って1グラム残したとします。
このガンの細胞分裂期間を100日とすれば、
取り残したガン量が元の25グラムになるには、
(2、4、8、16、32で)
おおよそ4回から5回の細胞分裂を要します。
つまり手術で得られる延命効果は、
400日から500日という計算になり
1年から2年弱となります。」
2.≪治療のEBM(科学的根拠治療)よりHBM(人間的質的治療)≫
「科学的根拠に基づいた医療――
EBM(Evidence Based Medicine)が
重要視されるようになってきました。(略)
例えばガンの手術でリンパ節郭清をするのは
当たり前だと信じられていました。
ところが(略)これも科学的根拠がなかったのです。
(略)万能ではないのです。
ガン治療の有効性を評価するEBMでは(略)
生活の質(QOL=quality of life.質の治療)を比較した
科学的根拠はほとんど得られません。
しかしどんなに科学的根拠が得られても、
絶対その治療でなければいけないとは限りません。
なぜなら治療を受ける患者さんは人間であり、
哲学や感情が存在するからです。」
どうでしょうか?
じつに分かりやすく具体的に、
ガン手術や治療の実態を説明してくれていると思いませんか?
僕と土屋医師は、ただの患者と医師というより、
いのちの質を高めるための「人生観」で
意気投合していましたから、その後、
「医師と患者で作った ガン治療入門」(NTT出版)
という共著も出版しまして、
中で、土屋医師は盛んに
「EBM(Evidence Based Medicine)治療より
HBM(Human Based Medicine)治療」を提唱し、
手術、抗ガン剤、放射線だけにこだわるのではなく、
遺伝子療法から代替療法まで、幅広い選択肢の中から、
人間本位の「合わせ技」のガン治療を薦めたわけです。
(詳しく知りたい人はこちらも読んでみてください)
もちろん土屋医師は、器用なタイプの外科医で、
癌研病院でも700人にのぼる患者を執刀してきた人でしたが、
残念なことに、若くして他界されてしまわれましたが、
ガン専門相談所の「キャンサーフリートピア」は
後輩の三好立医師がついでおられます。
納得して延命力を掴むには、
「治療のマイナス面も教えてくれる医師」
いや「患者の寂しさを分かってくれる医師」を探す――、
これがとっても大事なガン患者の法則なのですね。
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