第38回
ガン治療は、なぜ外科医なのか?
ガンを宣告されれば、白血病のような血液ガン以外は、
胃ガンにしても肺ガン、肝臓ガンにしても
ほとんどが外科に回され、
よほどの末期ガン(第IV期症状)で
手に負えない場合でもなければ、
まずは腫瘍を切り取る「手術の選択」を余儀なくされます。
いまの大学病院やガン専門病院の治療ガイドラインでは、
次のような手順が「標準治療」とされているからです。
1.ガンの疑いで入院⇒
2.CT、MRIや内視鏡による病理組織診断⇒
3.ガン宣告⇒
4.手術可能と判断されたら⇒
5.早期ガンの場合は内視鏡や腹腔鏡手術⇒
6.進行ガンの場合は切開手術のみ、
もしくは放射線+抗ガン剤+切開手術
これで治癒すれば幸運です。
しかし、大半の患者さんが
ガンの再発と転移の不安におののき、
やがて体の各部位にガンが浸潤、転移すると手術は
姑息的な治療法に過ぎなくなりますから、
強い抗ガン剤やピンポイントを狙う放射線のほか、
各種の免疫療法を施すことになりますが、
はたして、手術による完治力、延命効果は、
いわれるほど高いのか?
ガン患者にとってここが最大の関心事です。
今の医療システムでは、
どうしても外科の医師にわが身を預けねばならないとすれば、
ガン手術の長所と短所をしっかり知っておく必要があります。
ずばり、手術には長所と同じくらいの欠点が
たくさん潜んでいます。
しかし、自らの<生業否定>に繋がるような
手術のマイナス面の話を、懇切丁寧に患者に説明する
ガン病棟の外科医など殆どいませんね。
よほど、患者がしつこく聞かない限り、
「ガンは切れば完治します」といいきります。
幸いにも、僕の主治医の帯津良一医師は、外科医でありながら
「医師は患者の寂しさを分からなくてはいけない」と、
手術だけにこだわるのではなく、
代替療法や心身療法も組み合わせた、
いわゆる患者対話を第一とするホリスティック医療を目指す
日本でも珍しい外科医ですが、患者がもっとも悩む
「ガン切るべきか、切らざるべきか?」の選択について、
ズバリ、本音で実態を明らかにした
ガン専門のもう一人の外科医がおられました。
みなさんの中でもご存知の方もおられるでしょうが、
癌研病院をやめて、僕がガンに罹った頃、
日本で始めてのガン専門相談所
「キャンサー・フリートピア」を開設。
「医師の患者いじめに騙されるな」と
「ドクハラ」という流行語を流行らせた
患者のための「正義の味方」のような
人情味あふれる外科医でした。
残念にも5年前に過労で他界してしまったのですが、
土屋医師が残した著書に、どの外科医も書かない、
本音の手術選択の条件が明かされています。
素晴らしい良書ですから、ぜひ、皆さんと共に、
再読して見たいと思います。
その土屋医師の名著は、ズバリ、タイトルが、
「このガン、切るべきか、切らざるべきか」(NHK出版)
というものです。
その中に「手術選択の4原則」
=患者の判断条件をあげておられます。
1.手術による効果が他の治療より優れている
2.手術で失う犠牲の大きさと、
手術で得る延命効果が見合っている
3.根治性、安全性、機能保存で、
バランスのよい適正な手術計画が用意されている
4.1〜3の条件について担当医が詳細に説明し、
患者が手術に納得して同意する
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