第17回
西洋医学は「病気を見て病人を見ず」
1.「漢方医学」と「西洋医学」の治療原則の違いについて――
2.「漢方医学」の診察法の特徴について――、
「漢方医学」と「西洋医学」の違いの話の続きです。
漢方医学は西洋医学と比べて
病気を診断する発想が逆ですので、
その基本理論も治療体系もいまの僕たちには
分かり難い部分が多いわけです。
だからといって、漢方医を街角の占い師の類と
早とちりしてはなりません。
中国5000年、日本3000年の伝統に受け継がれ、
臨床検証の末に構築されてきた壮大な体系医学ですから、
それなりの「いのちのパワー」を秘めていると
思った方がよいと思います。
2.「漢方医学」の診察法の特徴について
西洋医学は「病気を見て病人を見ず」
というキーワードがあります。
薬の処方の面から見た場合、
これぞ西洋医学と漢方医学の違いを
もっとも分かりやすく言い表したものでしょう。
◆西洋医学=検査データで病名を決め、
同じ病名の人には同じ薬を使う。
◆漢方医学=体全体の観察で「証」(しょう)で総合判断し、
個人差に基づいた薬を処方する。
いろいろ、漢方には独特の複雑な理論がありますが、
面倒な人は、まず、このキーワード
「病気を見て病院を見ず」が示す、
東西の学問体系の違いを頭にいれておきましょう。
それぞれに長所、短所がありますが、
応急的な処置に有効な西洋医学に比べて、
漢方薬の処方が長寿難病の時代を迎えて、
ますます「元気で長生き」の延命のサポート力を
秘めていると思うからです。
(薬食養生法については後に述べます)
少し、専門的な話を続けましょう。
ちょっと馴染みにくい話となりますが、
漢方医学の診断と治療の基本は
『弁証論治(べんしょうろんち)』という考え方にあります。
また「漢方とは『易(えき』や
『陰陽五行(いんようごぎょう)』を基本概念とし、
体全体を『四診(ししん)』という方法で診断し、
『弁証論治』という方法で『証(しょう)』を決め、
その『証』に従って処方を決定する」――
独特の治療体系を持つ医学が漢方です。
これを頭に入れて本コラムを読み進んでください。
注・「弁証論治」とは「弁証」と「論治」の
2つの部分からなります。
「弁証」とは『四診』=望診・問診・聞診・切診によって
患者個々の症状を診断し、
基礎理論である『気・血・水(津液)』
をもとにして総合的に分析し、
『証』(病気の性質、部位、『正気病邪』の力関係など)
を決定すること。
注・『正気(せいき)』=病気に対する抵抗力、
『病邪(びょうじゃ)』=病気の原因)「論治」とは、
弁証で診断した結論から、心身全体の歪みを正すための
治療原則と具体的な治療法を決め、
どのような生薬を用いるかを決めること。
注・「気・血・水」とは、「気」=目に見えない生命エネルギー、
『血』=血液つまり栄養源、「水」=体液、分泌液、尿など。
西洋医学のリンパ液も。
この3つがスムーズに体内をめぐっていれば、
心身のバランスのとれた健康な状態といえる。
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