第7回
食道ガンの手術は100人に80人が助からない?
筆者はガンを切らない延命法で、
この10年、再発も転移もせずに幸運にも過ごしてきたわけですが、
いま思い返せば「ガンを切らず」に
よく生き延びてきたものだナァと、ちょっと冷や汗が出ます。
では、どんなガン治療をしたのか?
以下、新しい読者も多いと思いますので、
闘病の発端をかいつまんで紹介しておきましょう。
10年前、1999年、極寒の1月のことでした。
激しい胸の痞え(つかえ)、ご飯も豆腐も通らない嚥下(えんげ)
困難という、悪性の食道の進行ガンに襲われました。
58歳、いわばまだ働き盛りです。
「一瞬、頭が真っ白になる」という表現がウソではない
強烈なショックを受けました。
主治医から、手術を奨められ、
長さ6センチ、ソーセージ大ほどに食道腔内に膨れ上がった腫瘍を
抗ガン剤と放射線で半分くらいに縮めてから
手術する計画だったのです。
いま、ガン病棟では最も常識的といわれるガン標準治療法です。
しかし、職業柄、たまたま暇つぶしにベッドに持ち込んだ
ノートパソコンで治療法を検索している間に、食道ガンの手術は
「100人に20人ほどしか助からない難しい手術」だとする
学会論文を読んでしまったのです。
まさに「ガンは情報戦」=情報力の闘いでした。
なぜ、食道ガン手術の予後が大変か?といいますと、
肋骨(ろっこつ)の一部をはぎ、喉、胸、腹を
「3枚おろし」に切り開き、40センチの食道を全摘出。
さらに胃袋の神経を抜き、ナス型に細く叩きのめして、
食道の代用として喉に繋げる大手術なわけだからです。
その方法も3通りあります。
1.背骨にそって喉に食道代用の胃袋をぶら下げる。
2.胸骨(きょうこつ)の裏側を通す。
3.胸骨の前を通す。
どれを選んだとしても、
心臓や肺といった中心生命臓器の回りを弄(いじ)くる
大手術だということが分かると思いますが、
かりに上手く「代用食道」である胃が繋がったとしても、
喉と胃の膜は厚さが違い、実に接合が難しいという
欠点を持っています。
ですから、術後、後遺症、合併症を起こすばかりか、
食べることにも難儀(なんぎ)をするわけです。
代用食道である胃袋が胸骨などに圧迫され、
機能低下を起こして腸が張る、
また胃は雑菌に弱い性質を持っていますから、
術後は極端な食欲不振で体重が減ることになります。
1.術後1〜10日は栄養点滴
2.術後20日は流動食
3.最低1年間は食欲不信。少しずつしか食べられない
4.2〜3年かかってやっと症状緩和
いやはや、こうした手術の内情は、よほど患者がしつこく
質問しないと大学病院の医師は教えてくれません。
僕の主治医は、
「手術は簡単に済みます。2週間で好きなものも食べられますし、
ゴルフだってできます」と甘言を弄して、
手術を誘ったのですから、インターネットの記事を読んで、
僕は、ベッドの上で、オチンチンが縮み上がるほど、
びっくりしたわけです。
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