第150回
日本人は区切りをつけるのが好き?
日本の暮れ、「大掃除」という習慣がありますね。
新しい年を迎えるため、
それまでの古い1年の汚れを落とす区切りの行事。
家庭はもとより、神社仏閣、会社や商店に至るまで、
今でも恒例かと思います。
フランスに暮らし始め、
これはかなり日本的な精神文化に根ざした習慣なのかな、
と考えるようになりました。
なぜなら毎年のことですが、
年が改まると私はそれまでと違う
新しいページをめくるような気分になります。
ところがオリヴィエはそんな風に思いません。
新年と自分の人生に起こることに
特別な関係を見出したりしないからです。
単純に暦の年号が変わる、単にそれだけのこと、
という感覚なのです。
第147回で書きましたが、
フランスではノエルに日本のお正月のような雰囲気を感じます。
でも、大晦日はお祭り気分です。
それに1月1日に初日の出を見る習慣も、
これからの1年の無事を願って初詣に出かける習慣もありません。
新年を迎える神聖な気分は
全体にほとんどないといって良いでしょう。
実にこれ、私にとって非常に物足りないわけです。
年が改まる時、新しく始まる気分を祝いたいし、
結局は裏切られるかもしれないとわかっていても、
年の始めぐらい膨らむ期待感に身を任せてみたい。
だから日本のお正月を迎える気持ちや行事を
とても羨ましく思います。
そうして考えてみると、
日本とフランスの過去に対する思いの違いも見えてくる気がします。
日本人は過去を忘れっぽいと良く言われます。
それは新しい年にむけ、
それまでのことをきっぱり大掃除で
精算してしまうからではないでしょうか。
一方のフランスは、
そうしたページを改めることを歴史的なエポックに求めても、
毎年巡り来る年の変わり目に変化はありません。
綿々と続く暦上の年号が積み重なるだけ。
そんな感性の違いがあるような気がします。
どちらにもそれなりの良さがあると思います。
ただ先にも書きましたが、
私としてはそれまでとはまったく違う
新しい1年の始まりという気分は悪くないと思っています。
特に前年があまり思うようでなかったりしたら…
それを引きずることなく、
気持ちを改めて立ち向かえる
良いきっかけになるのではないでしょうか。
2005年もあと2日を残すのみになってしまいました。
やり残したことのないように…
といっても現実には
いつも年越しであたふたすることが多いのですが、
みなさま良い年をお迎えください。
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