第148回
日本とフランス、明かりの比較
12月は1年で一番昼間が短い月です。
第56回でフランス
(ヨーロッパといっていいかもしれません)の人々は
日本人に比べ薄暗くても平気だという話を書きましたが、
さすがに釣べ落としで日が沈む冬は
あっという間に暗くなってしまいます。
17時頃にはみな電気をつけています。
そんな冬、家々の窓辺から漏れる明かりが
どこか日本で見慣れていた光景と違うと感じたのは、
ここに暮らしてすぐの冬だったかもしれません。
どう違ったかというと、
ここの明かりは柔らかくて温かい気がしました。
ところが日本の家々の明かりは人工的で白白とした…
明るいけれど冷たかったかもしれないと思ったのです。
ある冬の一夜、
家で遊んでいた息子の友達を迎えに来たエレン
(お向かいのエレンではなく、
ここから5kmほど離れたところに住んでいる
コントラバス奏者の女性)に
「電気代高いわよね。
だからうちは電球の変わりに蛍光灯を使うようにしたの」
といわれました。
蛍光灯は電球より熱効率が良かったのです。
それを聞いたオリヴィエは以前から試してみたかったらしく、
早速私たちお気に入りの背の高いスタンドの電球を
蛍光灯に変えてみました。
数日そのままにして様子をみましたが、
結局またもとの電球に戻しました。
それでわかりました。
なぜ日本とここフランスの家々で明かりの印象が違うのか。
我が家のランプは、1930年代のアールデコスタイル。
絹でできた薄いクリーム色の大きなカサが付いています。
上に抜けて天井を照らす光りと、
カサを通してボーっと広がる光りが
柔らかく周りを明るくするものです。
それが蛍光灯に変えた途端、
全体に白っぽく冷たい明かりになってしまったのです。
数日は我慢しましたが、どうしても受け入れられませんでした。
せっかくのぼんやりとした余韻がなくなってしまったからです。
オリヴィエも実際に変えて試してみるまでは
これほどの違いに気付かなかったようです。
彼の仕事はアンティークの照明器具を扱うもの。
店の電気代は必要上けっこう高額になっていました。
だから蛍光灯に変えれば…と、期待をよせた面もなきにしもあらず。
でも、ここまでつまらない「明かり」になってしまうとは…
味のある照明器具(電気以前はろうそくを使っていた)も
これでは台無しでした。
電球の明かりはどこかオレンジ色っぽく温かい
(ろうそくの火に通じる?)ことがわかりました。
レトロといってしまえばそれまでですが、
生活を効率や経済性だけで割り切るのもどうなのか。
これが日本とフランスの
明かりに対する根っこにある違いかもしれません。
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