第136回
ライアテア島、夢と消えた大プロジェクト
最後の最後でした。
地元の銀行の融資は90%大丈夫。
だからOUIの返事を待つだけという状態だったのに、
結果は土壇場でのNONでした。
何のことかというと、
ライアテア島で水上飛行機の会社を立ち上げようとしたのです。
ほぼ2年奔走しました。
ライアテア島は、タヒチの地図を見ていただくと分かりますが、
ちょうどボラボラ島とフアヒネ島の間にあります。
どちらへの距離も同じくらい。飛行機だと10分。
タヒチ島を基点に各島への足となっている国内線エアー・タヒチは、
各駅停車でこの3島を結んでいます。
ボラボラ島はその美しい景観から
「太平洋の真珠」とも形容される有名な観光地。
フアヒネ島はそれより知名度は劣るものの、
ラグーン(礁湖)もきれいで高級ホテルもあります。
そこに観光も兼ね、
湖のように静かなラグーンに直接離着陸可能な
水上飛行機を持ってこようと考えたわけです。
もちろん私たちに飛行機などテクニカルな知識はありません。
他に整備技師(フランス人で当時ライアテア島在住)と、
パイロット(フランス本国から募集)。
彼らが申請書類を作成した、という仲間がいました。
ほとんど無理。
一番難しいといわれたのが
政府の「飛行機会社を作っても良い」という認可でした。
いくら小さくても人命にかかわる点で、
その審査は大きな飛行機会社と何ら変わらないからです。
何度かタヒチ島に足を運んだ結果、
大方の予想を裏切って認可が下りてしまったのです。
ただ「エアー・タヒチの利は犯さない」という条件で。
これでほぼ50%の進展と喜び、次ぎは資金面の手当てでした。
会社を起こす私たちの他に出資者を募り、
東京も合わせてまあまあ順調に予定の額が集まりました。
そして最後が銀行からの融資だった、
というわけです。
なぜ銀行が土壇場で否定したのか。
どうやらエアー・タヒチとの競合は避けられないと
判断されたようです。
圧力がかかったとしか考えられませんでした。
蟻と象ほどに規模の違う会社です。
象の体が多少こそばゆいことはあっても、
それに足をすくわれることはない。
象にとって蟻の存在など無に等しい、
と私たちは簡単に考えていました。
ところが現実は、
島特有の完全独占体制への挑戦になっていたわけです。
今になって思えばこれで良かったと心底思います。
ゴーが出ればそっちへ行くべきでも、
実際にその道はなかったわけです。
無理にない道を探し回るより、
目の前に続いていた道を歩き続けたからここまで来られたのです。
今また曲がり角に立っているのかもしれません。
どっちへ曲がるかはもう決まっていますけど。
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