第98回
フランスのパンの味 1
フランスのパンといえば、
なんといってもあの細長い日本語で言うところのフランスパン、
正しくはバゲットbaguetteを
思い浮かべる方がほとんどだと思います。
確かにバゲットはフランスの食を代表する一つと、
フランス人自身も大いに認めるところです。
なにしろ半分以上のフランス人が、
バランスの摂れた食事に欠かせないもの
と思っているくらいですから。
パリの街角をあの細長いパンを小脇に歩くなんて、
いかにもフランスという感じがしますよね。
ただバゲットと一口に言っても、
実は様々な細長いパンがあるのです。
伝統的なバゲット・トラディッション、
一般的なバゲット・オーディネル、
などなど。
パリのはここいらで売られている物よりずっと細長かったりします。
それはバゲット・パリジェンヌといいます。
もっと平べったかったり、両端が尖っていたり、
二股に分かれているのもあります。
さらに形のみにとどまらず、
いろいろ粉の種類、配分の違いによって
全部別のパンになるわけです。
それぞれ違う名前を持っていますが、
その名をいちいち上げるのはほぼ不可能です。
なにしろパン屋
(フランス語だとブーランジェリboulangerieといいます)によって
本当にいろいろな名がつけられているからです。
フランス語能力にかける私のみならず、
ここの人達にとってもあまりのバラエティーで
とても全部は把握できないというのが現実のようです。
といっても、どの人も毎日のように買う「自分のパン」は
はっきり決まっています。
たまにいつものパンが売り切れだったり、
いつものパン屋がバカンス
(つまり定休日ではなく2週間の長期休み)のことがあります。
そんな時はちょっと浮気をしますが、
基本的にどこのパン屋でどのパンを買うか、
フランス人はしっかり決めているように見受けます。
日本人がお米にこだわるように、
フランス人はパンに同様のこだわりを持っているということです。
ちなみに我が家のひいきのブーランジェリは
セネの中心部にあります。
実はもっと近くに1軒、
1年ほど前から若い夫婦の経営に変わったところもあります。
とても気さくで愛想も良いのですが、パンの焼きあがりが今一つ…
オリヴィエももう少し美味しければいつも買うのに
と残念がっています。
パン屋は「人柄」だけでは繁盛しないようです。
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