第70回
「ねぇ、僕も養子なの」
息子が6歳か7歳ぐらいだったと思います。
学校から帰ってくるなり
「アクセルは養子なんだって?ねぇ、僕もそうなの?」
と聞かれました。
アクセルは彼より1歳下の男の子、生国はベトナム。
彼の両親は普通に日本人が想像する「フランス人」です。
息子は「養子」が何たるかはほとんど判っていなかったと思います。
友達同士の話の中か、誰かの話を聞いてかわかりませんが、
自分も半分アジア系だから
アクセルと同じ「養子」という者なのかなと想像したのでしょう。
私はこう答えました。
「あなたはね、母親である私が日本人で、
フランス人の父親との間にできた子なの。
アクセルはね、彼の両親の子供になった、つまり養子になったの」
説明はしたものの本当にわかったのか半信半疑でしたが、
本人は「フーン」というように納得したようでした。
フランスでは、
人種の違う赤ん坊を養子にとることは珍しくありません。
その理由はさまざま。
子供のできないカップルだけでなく、
自分の子がいても
さらに貧しい国の子を実子として引き取って育てる人もいます。
2004年1月1日現在、
この国(海外領土や海外県も含む)の人口は6170万人。
毎日2人の子が養子としてフランス人家族になっているそうです。
さらに子供たちの出生国は70ヶ国にも及んでいます。
一番多いのがアメリカ圏からで31%。
次いでアフリカ圏24%、ヨーロッパ圏23%、
アジア圏23%と続きます。
(2005年1月13日付ル・ポアンLePointより)
いつ頃から違う国の子を養子に取るようになったのかわかりません。
20年前ですが、
旅行中明らかに人種の違う両親と子供に会って
内心驚いた記憶があります。
すでに普通に受け入れられている家族形態のようでした。
日本では子供を産まない女はどうの、
産めない女はどうのといった
オニババ論争というのがあったようですが、
産まない自由もあれば
産めない苦しみもあるのではないでしょうか。
少なくともフランスで
子供を作るか作らないかは
個人の選択にゆだねられている気がします。
一方で子供のできないカップルが、
血縁にこだわらず養子という形で
「子育て」大事業に挑戦するのも、
先の数字が示すように珍しくありません。
こういう社会、私はけっこう健全だと思うのですが、
みなさんどう思われますか。
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