第62回
1年中食べられる生牡蠣
ブルターニュ地方沿岸部は、
牡蠣の養殖で良く知られるところです。
ここモルビアン湾もそうですが、
モン・サン・ミッシェル周辺、特に前回触れたコンカルCancaleは
なんとローマ時代からの歴史を誇っているほど。
フランスでは、
もともと丸くて平たい牡蠣
(日本ではフランスガキといっているようです)が主流でしたが、
ブルターニュでは病気が原因でほぼ全滅した経緯があります。
その後日本から種牡蠣が輸入(1965〜80年頃のようです)され、
養殖されてきました。
今ここで多く売られているのは、
日本で一般的に見る牡蠣と同じマガキの一種です。
何かで読んだことがあるのですが、牡蠣は肝臓にいいそうです。
どうやら牡蠣に多く含まれる銅が関係しているようですが、
基本的に豊富なミネラルはいかにも健康に良さそうです。
実際は単純に「美味しい」からなのですが、
ほぼ毎週日曜日の昼(たいてい両親の家で)、
前菜に生牡蛎を食べています。
一人12個見当、つまり1ダース。
大きさで値段がサンチームの単位で違う程度で、
1ダース3〜4ユーロの間です。
日本からみたらすごく安いと思いますが、
ここで「毎週」はちょっと贅沢になります。
こちらの牡蠣はむきみというスタイルはありません。
全部殻付きです。
冬のパリのビストロで、
牡蠣むき専門の職人さんが表で次々と牡蠣の殻を開けている光景を
ご覧になった方もいると思います。
もくもくと貝を開けているのはほとんど男性。
つまり家庭でも当然男性の仕事になります。
いろいろコツがあり、慣れるとけっこう楽に開けられるようです。
でも数が多くなればそれなりに大変な作業です。
だから時間と気持ちに余裕のある日曜日の昼、
という事になるわけです。
ちなみに常に殻付きの牡蠣なので、
フランスの一般家庭で牡蠣を調理する事はほぼありません。
そこが「むきみ」なればこそ
お腹いっぱいの牡蠣フライができる日本と違うところです。
この辺りでは夏、つまり年間を通して生牡蠣を食べますが、
パリやリヨンなど産地と離れた地域では冬の食べ物になっています。
好き好きがありますが、
夏は貝の身が肥り、とてもミルキーな濃い味になります。
オリヴィエと私はこれがけっこう好きですが、
一般的にフランスでは
冬場のさらりとした牡蠣のほうが好まれるようです。
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