第60回
世界遺産、モン・サン・ミッシェル
フランスには全部で27ヶ所(2004年現在)の世界遺産があります。
その中でもモン・サン・ミッシェルle Mont-Saint-Michelは
世界中の観光客ばかりか、
フランス人自身をも惹きつけて止まない場所のようです。
そういう私は
過去何回も旅行でフランスを訪れていたにもかかわらず、
モン・サン・ミッシェルへ行く機会を持ちませんでした。
ブルターニュに住むようになってもそうでした。
でもここでは
「モン・サン・ミッシェルへまだ行ったことがない?!」と驚かれ
「ぜひ行くべきだ」と、それはちょっと恥ずかしい事だったのです。
実際に行ってみて、
「チャンスがあったら見るべき」だと実感しました。
モン・サン・ミッシェル湾と名づけられた湾岸を走行中、
遠くにかすむ浮島のようなモンが見えた時は少し胸が高鳴りました。
さらに陸地とモンを結ぶ1本の堤防
(途中写真を撮るに適した地点で広くなっていて
車を止めても良い場所があります)から
間近に全体を見上げた時はさらに「凄い」と思いました。
何を「凄い」と感じたのか…
青空の中にすっくと立つ黄金の大天使ミッシェルの像と、
その下に築かれた重々しい教会というより城塞のような全体像。
自然と人工的な建造物が一体となったその姿に「凄さ」がありました。
サン・マロ旧市街
(対岸のディナールDinardからじっくり眺めました)もそうですが、
モン・サン・ミッシェルも外側から全体を眺めた時に
より感銘を受けるのではないでしょうか。
そこに入ってしまうと印象が変わるからです。
車を止め実際浮島の中に足を踏み込むと、
そこは普段より人出の少ない日だったにもかかわらず
レストランやみやげ物店の並ぶ狭い参道は
人の背で埋まっていました。
外観の重々しい佇まいとはまったく違う、賑やかな観光地。
驚きと共に興をそがれたのも確かです。
義父もその雰囲気の落差に一瞬呆気に取られていました。
参道の脇に人気のない狭い階段を見つけ、
私たち(息子だけは平気でした)は息を切らしながら上りました。
かなり大変でしたが、人気がないので満足でした。
道筋が決められているわけではありませんが、
とにかく上へ行けば教会建物の入口に辿りつきます。
チケットを買う経緯は第54回(5月20日)の中で触れましたが、
ここでの長蛇の列はどんな時期でも変わらないでしょう。
建築様式、歴史に浸るにも教会内では
人波にもまれながらというのもある程度覚悟しないといけません。
それでも何百年も前のまま、
表面がでこぼこして空気も入ったような厚いガラスごしに
砂と海の下界風景を垣間見た時、
ふと21世紀の喧騒を忘れていました。
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