パリだけがフランスではありません

第30回
日本だったら落ちこぼれ?

週2回、オルトフォニストのマダム・アリオの所へ。
週1回、プシコモトゥリシエンヌpsychomotricenne
(正確な日本語訳はわかりませんが
中枢など脳の精神運動をサポートする人です)の
マダム・マリブエットの所へ通いました。
彼はよく数字やアルファベットを左右逆に書いていて、
こうした混乱をサポートするためでした。

マダム・アリオは読み方、書き方を
技術的な面から厳しく久を指導しました。
読み方のメソッドはフランス語初心者の私にも役に立つからと、
口出しは一切しない約束で
授業(1対1です)の同席を許されました。
甘えん坊の息子を厳しく突き放し、
わかるまで根気よく叱ったりなだめたりしながらの30分強。
すごいと思いました。

一方のマダム・マリブエットのほうは当然彼一人です。
簡単な運動や遊びのようなメソッドだったので、
嫌になることはありませんでした。

この時期、私自身も相当なエネルギーがいりました。
送迎の手間はもちろん、学校の宿題と別に10〜15分ですが、
マダム・アリオからの本を読ませる必要があったからです。
時に子供は嫌で泣き叫びます。
心ここにあらずという事もありました。
知らん顔をしたり、本気で叱ったり、なだめ、誉めたり。
真剣に向き合いました。

夫?この時は一切役立たず。
だいたい「時間がたてばわかる」という立場だったし、
息子より先に自分のほうがイライラしてしまうからです。

亀の歩みのような進歩で学期末を迎え、
夏休みに入ってしまいました。
休み中7月は2ヶ所に変わらず通い、8月は自宅学習。
マダム・アリオからは
私が毎日少しでも読ませるようにと宿題が出ました。

9月、2年生になって数日後、再びアニーが私を呼びとめました。
満面に笑みを称え
「凄いわ。久の読む力はグループでもトップレベルよ。
夏休み中随分頑張ったわね」と言われたのです。
家ではたいしたこともなかったので
驚きと共に本当にホッとしました。

日本だったらどうなっていたでしょう。
発育のアンバランス(特に脳の発達速度と精神的なもの)は、
自然に追いつく子もいれば、
手助けが必要な子もいるのだと思いました。
気付かずにいて、いつか取り返しのつかない差が出てしまう。
落ちこぼれとはこんな風にして始まるのかもしれないと思いました。


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2005年3月25日(金)

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