パリだけがフランスではありません

第29回
オルトフォニストのところへ

小学校へ上がって半年ほどして、
担任のアニーが息子を迎えに行った私を呼びとめました。
彼女は40代後半のベテランといって良い先生でした。
「久ね、実は読めなさ過ぎるの。
話すことは問題ないし、説明もきちんとできる。
他のことは全部普通なのに
読む段になるとすべての機能が停止したように受けつけないのよ。
私にはどうしてなのか、どうすれば良いかわからないの。
一度オルトフォニストに相談したらと思うけど、どうかしら?」
と言われました。

オルトフォニストorthophoniste。
もちろん久の問題で関わるまで、
そんな職業の人がいる事などまったく知りませんでした。
言語(ここではフランス語です)の専門家で、
ある意味でお医者さんなのでした。
だから支払いには健康保険もききます。

辞書を見ると「発音矯正士」
あるいは「言語(障害)治療士」とあります。
具体的には、普通に言葉を発したり読めない原因を探し出し、
治療するというわけです。
オルトフォニストの所にかようのは子供とは限りません。
大人になって問題が出る人もいるのです。
原因には歯並びや舌の長さ、
その他いろいろ身体的な要因もあるからです。
日本語でいうどもり症状も典型的な治療対象となります。

最初オリヴィエは「大袈裟だ」と反対しましたが、
私は他の子とあまり差がないうちに
手を打つほうが良いと主張しました。
放っておいてコンプレックスから嫌いになってしまったら、
基礎だからこそ取り返しがつかないと感じたからです。

2月。
アニーが推薦してくれたオルトフォニストに
3人で会いに行きました。
4月から週2回、
学校を途中で抜ける形で通い始めることになりました。
さらにオルトフォニストの勧めで、
精神面からサポートしてくれる人のところにも
週1回通う事になったのです。
なぜなら幼少の複雑な言語環境から
頭の中の整理がなかなか追いついていないようだったからです。


←前回記事へ

2005年3月23日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ