第23回
アメリカのおじさんOncle d’Amerique
フランスには「アメリカのおじさん」という言い方があります。
ロトLotoといった一種の宝くじに当たって、
思いがけない大金がもらえる知らせが来た時に
「アメリカのおじさんからの知らせ」と言うそうです。
「アメリカのおじさん」とはどんな人かというと、
もちろん大金持ち。
一族のなかに一人でもそんな人がいたら、
みんな安心して暮らせます。
そんな憧れ、夢、希望がこもっている
「アメリカのおじさん」なのです。
かつてフランスからアメリカに移住した人は数多くいました。
なかにはかの地で財をなし、亡くなった時に
故郷の親類に思いがけない財産を残した人がいたわけです。
そんな通知が届いた時、
「あのアメリカに渡ったおじさんだ!」と大喜びするわけです。
フランス人のなかにも
アメリカン・ドリームは脈々と生きていたのです。
その一方でフランスは自国の言葉や文化に、
前回の「ココリコ」ではありませんが非常に誇りを持っています。
保守的といえるほどそれを脅かされる事を嫌います。
たとえばハンバーガーのマクドナルド。
今やさすがのフランスでも、
特に郊外の高速道路の分岐点などには必ずあります。
といっても日本の数10倍の年月が費やされての事です。
今の若い人にはそれほど抵抗はないようですが、
30代以上は子供の付き合いを除いて、
自分から積極的に食べに行こうという人はごくわずかです。
年配者に至っては名前を聞いただけで顔をしかめます。
一般的にフランスには
バゲット(日本でいう細長いフランスパン)で作る
バゲット・サンドがあります。
パンを半分に切り、バターを塗ってハムを挟むくらいの物です。
どこにでも売っています。
みんなこれをかじって
簡単に昼を済ましてしまう事も少なくありません。
フランスにおいてこれがハンバーガーに取って代わられることは
絶対にないのです。
ついに「アメリカのおじさん」も、
21世紀の今ではほとんど死語に近いだろうと
オリヴィエは言ってました。
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