第21回
チェックという便利だけど厄介な物
フランスでは、支払い方法に
いくつかの種類があるのを御存知ですか。
まず日本でいちばん一般的な現金払いですが、
ここでは小額の支払い(20ユーロ未満)に
多く用いられるに過ぎません。
日本では最近偽札事件が相次いでいますが、
フランスは以前からその手の事件が絶えないからかもしれません。
大きな額のお札(100ユーロ以上)での支払いは
断られることもあります。
次がカード支払い。
でも、日本のクレジットカードとはまったく違います。
フランスは銀行カードなので、カードで支払ったとほぼ同時に
自分の銀行口座から引き落とされるシステムです。
ずれても数日に過ぎません。
最後がチェック支払い。
ようは個人用の小切手帳ですね。
支払いの際、大型店だと無記入のチェックを渡せば
すべて機械で書き込んでくれ、
確認してサインをすれば良いのですが、
一般的にはすべて本人が書きます。
各種税金、公共料金の支払いから一般商店まで
広い範囲で使われます。現金扱いなので手数料はありません。
小切手を受け取った人が自分の銀行に持って行き、
口座に入れると数日後に現金化されます。
その時点で払った人の口座から引き落とされるわけです。
場合によって現金化の日を指定する事も可能なので便利です。
ただ厄介なのは、
支払い金額を数字と共にフランス語で書かなければならないこと。
手書きの数字では読み違えたり、
桁を勝手に変えられる可能性があるからでしょうか。
たとえば265ユーロは、数字はもちろん、
ドゥ・ソン・スワソント・サンク・ユーロ
- deux cent soixante-cinq Euros
とも書かなければなりません。
引越し当初、4月半ばなのに寒くて暖房を切れない日が続きました。
燃料の石油を注文したところ、
大きなタンクローリー車が我が家の前に止まったのは
オリヴィエが留守の時。
支払いは4千フラン前後になるため当然チェックです。
ところが私はまったくフランス語が書けませんでした。
チェックに請求書通りの数字は書き込んだものの
その後が続きません。
仕方なく「書いてもらえます?」とペンを差し出すと、
その人はひどく不思議そうに私の顔を見ました。
「私ね、日本人なの」と続けると、
ようやく納得顔で
「そうだよね、フランス語を書くのは難しいからね」
と同情すら示して残りを書き入れてくれました。
実は今でもしばらく振りにチェックを切る時は、
綴りを間違えないかとちょっとヒヤリとしてしまいます。
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