第14回
家のリフォームは未完成(1)
月曜日。
この日オリヴィエの店は休みなので、
彼は家の1階の洗面所とトイレのドアのペンキ塗りをしています。
この家で暮らし始めて5年目になりますが、
まだリフォームは終っていません。
私たちが買った家は、
こちらの言い方だと「小さな漁師の家」となります。
土台が作られたのはかれこれ100年以上前になるでしょうが、
別にフランスでは取りたてて古いわけではありません。
日本的に表現すると
長屋作りでお隣りとは棟続きになっています。
ただし薄っぺらな板1枚の壁で仕切られているわけではありません。
古い石の家です。
両隣りとも
50cm以上はあると思われる石の壁で隔てられているので、
お互いのプライバシーは完璧に守られています。
この家を見たとき、私たちはなんとなく気に入りましたが、
最初の一軒目だったこともあり口にはしませんでした。
それから数日さらに家を見たある夜、
オリヴィエが、「最初の家をどう思う?」と聞いたのです。
結局もう一度見せてもらって決めました。
その時すでに彼の頭の中には、
この家をどう変えればより良くなるか、
具体的なプランができていました。
一般にフランスでは、古い家を買い、
自分たちでこつこつ中をリフォームするのは珍しくありません。
石造りの古い家は外観に味があるだけでなく、
今時本物の石の家など建てられないからです。
普通に住むため手に入れる人もいれば、
セカンドハウスや退職後の住処にするためと目的は様々。
我が家の向かいに3人の子がいる30代半ばの夫婦がいます。
越してからすぐのこと。
奥さんのエレンが
「私たちも古い家を買ったから、
こうして落ちつくまで4年もかかったわ」といいました。
その時は単純に経済的な問題を言ったのだろうと思いました。
でも、現実にそれを経験した今、
時間がかかるのは資金のせいだけでなく、
いろいろな事情が絡まる結果なのだと実感しています。
家を直すとは、忍耐の連続なのだとわかりました。
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