パリだけがフランスではありません

第4回
難破船「エリカ」の影響

ところで私たちが家を買った年(2000年)の初め、
ブルターニュ地方沿岸部では「エリカ」という貨物船が座礁し、
大量の重油流出で大公害を引き起こしていました。
油がべったりと体にこびりついて息も絶え絶えの水鳥。
砂浜を真っ黒に埋め尽くした重油の固まり、などなど。
テレビニュースの画像は、連日の被害を大きく伝えていました。
それは正にフランス人がどうにもならない状況を指して言う
「カタストロフ!(catastrophe/大惨事とか破局という意)」
そのものでした。

我が家はブルターニュ地方モルビアン県の
県庁所在地ヴァンヌの町に近い、
海辺(200mほどの小さな砂浜があります)まで
歩いて1分の所にあります。
この県の沿岸部は大きな内海のようなモルビアン湾に面していて、
湾内には大小の島が点在し、
1年を通してヨットの帆影が絶えません。
だいぶ後になって知ったのですが、
湾周辺はフランス国内でも5本の指に入る
風光明媚な場所として知られる有名観光地でした。

私たちはわざわざ冬の真っ只中に家探し
(海辺の夏の賑わいは当然だったので、
冬の様子で素顔が分かると考えたから)をしました。
冬でも人が行き交い、
日常の生活感に溢れていたヴァンヌ近郊が
観光地だとは夢にも思いませんでした。
「エリカ」の影響がいかに大きかったかに気付かされたのは、
翌年2度目の夏でした。

ヴァンヌでは週2回、
水曜と土曜の午前中にマルシェ(露店市)が立ちますが、
観光シーズンの夏中、
いつ出かけても車を止める場所探しに苦労したのです。
冬人口に比べ、
ここでも夏人口が大きく膨れ上がることを実感しました。
1年目、近郊の海辺のどこへ出かけても
人や車が多いとは感じませんでしたが、
それは本来の姿ではなかったようです。
近所の人しか来ない
小さな浜辺しかない我が家の回りはたいして違いませんが、
ヴァンヌの町をはじめ、
いかに「エリカ」の事故が
ブルターニュ地方沿岸部の観光に
大きな影響を与えていたのかを知ったのでした。


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2005年1月24日(月)

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