三十一、紅焼大網鮑と砂鍋大排翅
シロウトからはじめて、クロウトはだしの料亭になったお店は少なくない。私の知っている範疇でも、京都の「雲月」がそうだし、台北の「馥園」がそうである。双方とも女性だけでやっているのが共通しているし、片一方がおかあさんを引き込んでいるのに対して、もう一方は妹たちを引き込んで、自分たちなりの創意工夫をこらしているのも共通している。食いしん坊はどこがうまいかをよく知っていて、「歴史をもっている」とか「世間によく知られている」とか、そんなことにはまるでこだわらない。うまくて、雰囲気がよくて、サービスもよくて、そのうえ値段も合理的であれば、お客はどんどん押しかけて行く。いまあげた二軒は、三つ目まではよろしいが、お値段のところまでくると、残念ながらサラリーマンがサラリーをもらった日にだけ出かけていくということになる。
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