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10. エノテカ<その壱>

イタリア生活も半年が過ぎ、私がもっとも好きな季節「秋」を迎え
3件目のレストランへ意気揚々と向かいました。
場所はピエモンテ州、州都トリノからアルバ行きのバスに乗り1時間ほどのところ。
カナーレという人口5500人ほどの小さな町にある、
Ristorante All'ENOTECA 「リストランテ アル エノテカ」
一軒目のレストラン修行時に(第6回参照)知り合い、
私と同じように日本から料理の勉強に来ていた女性のコックさん曰く
「泊さんにぴったりのレストラン!」。
それがこのレストラン。

とりあえず、場所が分からないので、アルバの町で待ち合わせをとのことで、
言われた通りに待っていると、見知らぬオジサンに話しかけられました。
「キミかい?日本人で料理の勉強に来ているヨシというのは?」
話を聞くと、どうやら私が働くことになるレストランのシェフのお父さんが
車で迎えに来てくれていました。
挨拶も無事終わりさっそく車に乗り込み15分ほど揺られた後、
目的地のエノテカに着きシェフダヴィデが出迎えてくれ、
まずはレストランの中を案内して貰い、すぐ傍の住居まで送っていただきました。
住居は店から徒歩1分、4階建てのアパートの最上階、屋根裏木造部屋。
これがなかなか住み心地良さそうな空間、キッチン、シャワー、トイレ完備。
天井が低くしゃがんで歩かなければならない場所もありますが、今までで一番の寝所。
そしてシェフに尋ねる。「住むのは私一人ですか?」
シェフ「いや、もう一人イタリア人コックがいるんだが彼は今、徴兵に行っている。
来月には戻ると思うが、あーそうそう、もう一人日本人を雇ったから
その日本人も来月くらいには来るかな・・・」
じゃぁそれまで私一人で住むのか・・・と思っていたら、
シェフ「それまで私とキミの二人だから・・・、仕事開始は明日の朝8:30、
店の前で待ってるから」と言い残し帰っていきました。
シェフと私、二人だけ?! イタリア語もままならないわたしと・・・
サービスはシェフのお姉さんとサービス員がいると言っていたので困らないが、
50席以上ある客席、二部屋に分かれているキッチン、そしてコックは二人。
何やら嵐の予感!

シェフがどんな料理を作り、どんな仕事をするのか分からないけれど、
何か言葉では言い表せない何かをこの時の私は感じていました。


2007年7月11日 <<前へ  次へ>>