加工場の西方700メートルの所に
パイロンタンと呼ばれる美しい泉があります。
泉と大木を崇めるタイ族は
宋の時代からこの泉に白竜が住んでいるとして
泉のほとりに白竜王の石像を祭っています。
白竜は西遊記にも登場する四竜のうちの一つ、
中国西方を守る廣順王。
稲作中心のタイ族にとって雨と雲を司る重要な神です。
周囲200メートルほどの泉の中心には
絶えることなくコンコンと清水が湧き出ています。
泉の水はタイ族の村全体で
飲料水や生活用水として利用されまさに命の水。
加工場では源泉に直接パイプを通して、
コーヒーチェリーの脱皮の加工作業に利用させてもらっています。
何より大自然の地層で濾過された湧き水で
ドリップしたコーヒーは格別です。
泉の軟水がティピカの酸味を引き立たせ
マイルドな味わいを醸し出すのです。
泉がもたらすもう一つの恵みが川魚です。
訪ねてくる訪問者が口をそろえて、
「雲南省の山奥で
こんなにおいしい魚を食べれるとは思わなかった。」
と驚きます。
タイ族がホンユイと呼び、
日常的に食卓にのるこの魚の食べ方はとてもシンプル。
腹わたを取り除き、レモングラスやパクチー等のハーブを詰め、
台所の軒先で炭火焼きに。
タイ族のお母さんが七輪の前にかがんで
団扇で扇ぎながら魚を焼く風景は
昭和の懐かしい風景と同じかもしれません。
仕上げに山椒と唐辛子を漬け込んだ特製醤油で味つけします。
香ばしいホンユイは、
日本で食べられるニジマスより臭みがなく
淡白でふっくらとした味わいです。
このような信仰の対象でもある泉も、
中国の経済発展の波は避けて通ることはできません。
雲南省の大手不動産会社がリゾート向けの投資物件として
泉ごと付近の土地の地上権を買収し開発を始めました。
泉へ続く竹林は舗装され、
トラックが重機を積んで行き来しています。
豊かな自然が守られることを祈るのみです。
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