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18.羽蟻の季節
保山に野山の花が咲き乱れる美しい春がやってきました。
これから雨期に入るまでの数週間、
種まき・定植準備・肥料やりの春の農繁期です。
有機栽培の天敵は害虫と雑草。
農園の天敵はどんどんパワーを増していきますが、
ここは私たちの腕の見せ所。
有機農法の経験と技術で
予防と起きた問題は一つ一つ丁寧に根気強く取り除いていきます。

ところが虫との戦いは、
加工場内の私達の部屋に帰ると完全に形勢逆転です。
部屋に現れる虫は、天井の電球めがけて無数に飛び交う蚊の大群。
夜中にハサミのついた尾を海老反りにして
音も無く足もとに忍びよるサソリ。
そして、ヘビ・蜂・クモ・ヤモリにアリ。

この中でも私達が最も恐れながらも、待ちに待っているのが、
朝起きて、窓が真っ暗になる程網戸に詰まって
羽をばたつかせている羽蟻の大群です。
4月初旬の大雨の後、一日だけ羽蟻が大発生する日があります。
夜に羽化し、朝には一夜の寿命を終えた羽蟻の死骸が、
怒江の川沿いの村に絨毯のように広がります。
この地域では、羽蟻の羽化は
約2週間後に雨期に入るという大切な合図なのです。

初めての遭遇した時は、
ヒッチコックの鳥の大群さながらの光景に
恐怖で声も出ず立ちすくんでしまいました。
オロオロする私たちの前に笑顔で現れたのは、
箒と塵取りを持った従業員のおばちゃん。
サッサと窓の羽蟻を集めて台所に向かいました。
そしてお昼の食卓には
羽を取られてカリカリに揚げられた羽蟻が並べられたのです。

廊下に迷い込んだ大きな蛇がいると、
蛇は綺麗に内蔵を取り除かれ、
ぶつ切りになってスープのダシに浮かんでいます。
手のひらサイズの小さい蛇は、捕まえて直ぐに手作りの白酒の中へ。
薬草と混ぜて薬用酒になります。
村では虫や蛇は豚や鶏同様に、
貴重なタンパク源のご馳走となっているのです。

その後村の人に、ユーカリ油を水に数滴落とし
霧吹きでかける虫の予防法を教えてもらいました。
これは効果てきめん。
蚊もアリもダニも近寄ってこなくなりました。
保山の特産品のユーカリ油は天然の防虫剤です。

物は無くても少数民族の人々は
自然と共に生きる知恵を身につけています。


2010年4月7日(水)

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