第463回
白酒で「干杯!」すると、訴訟が減る?
中国ビジネスを語る上で、
白酒の存在を避けて通ることはできません。
白酒(ばいじょう)はコーリャンを主原料とする
無色透明のお酒で、アルコール度数は
低いものでも38度、高いものだと70度を超えます。
宴会ではこれを、ロシアのウォッカ同様、
生で一気にあおります。
日本の白酒(しろざけ)は女子供の飲み物ですが、
中国の白酒(ばいじょう)は男の中の男の飲み物なのです。
中国企業とビジネスを始めると、
必ず、この白酒の洗礼を浴びることになります。
「第8回 干杯とは、杯を干す事なり」でもお話したように、
田舎の国有企業などに行くと、
商談などそっちのけで、すぐに宴会となり、
「干杯!」「干杯!」(「かんぺい!」「かんぺい!」)
が始まってしまいます。
私も、丸紅で石炭の仕事をしていた時には、
出張で田舎の炭鉱に行く度に、
「干杯!」「干杯!」で酔いつぶされておりました。
当時は、「こんな生活続けてたら、
絶対、肝臓こわして早死にする」と思い、
いやでいやで仕方がなかったのですが、
今から考えてみれば、あの「干杯!」は、
「お互い身内になるための儀式」
だったのかもしれません。
中国の人たちの行動原理である
「身内と身外では全然態度が違うの法則」でいけば、
お互いの関係が「身外」の状態でビジネスをしても
うまくいくわけがありません。
ビジネスの話は、
「干杯!」「干杯!」で酔っ払って自分をさらけ出して、
お互いが絶対的な信頼の絆で結ばれてから、
ということなのでしょう。
ただ、最近、北京など大都市の宴会では、
白酒での激しい「干杯!」「干杯!」はなりをひそめ、
紅酒(ほんじょう、赤ワイン)を
「随意(すいいー、飲む量自由)」で
飲むことが多くなってきました。
大都会ではビジネスの進め方も近代化しており、
「身内」とか「身外」とかとは関係なく、
契約書の条件に従って、
ドライにものごとが進んでいくように
なりつつあるためです。
確かにこの方がスマートですし、
健康にも良いのですが、
なんとなくもの足りない感じもします。
中国も今後、こうしたアメリカ式のドライな
契約社会、訴訟社会になっていくことが予想されます。
しかし、本当は、お互いが
白酒の「干杯!」「干杯!」で培った「身内」意識を持って、
絶対的な信頼の絆の下でビジネスをする方が
ビジネスをしている本人たちも楽しいですし、
もめごとや訴訟も起こりにくいのかもしれません。
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