第217回
判決がなくても差押えが可能な場合があります。
これまで相手が任意に代金を支払わないときには、
判決を取って差押えをするほかないという説明をしてきました。
この判決を取るには時間も費用もかかるので、
公正証書を作成できる場合には
公正証書を作成しておいた方がよいという説明もしました。
ところが、判決や、公正証書がなくても
差押えができる場合があるのです。
どういう場合かというと、
相手に売却した商品が相手の手元に残っているときです。
この場合、これらの商品については、
判決を取らずに差押えることができます。
ただ、実際上は、相手の手元に
自分の売った商品が残っている場合には、
差し押さえをせずに
商品を引き上げてしまうことが多いようです。
しかし、法律上は、自分の売った商品であって
代金を支払ってもらっていないとしても
勝手に引き上げることは認められていませんので
ご注意ください。
この判決がなくても差押ができる権利を
動産売買の先取特権と言います。
先取特権は、その名のとおり、
先取り、即ち他の債権者に
優先的に弁済を受けることができます。
この先取特権により差押ができるのは、
相手の手元に残っている商品だけではありません。
自分が売った商品を相手方が売ってしまって
売掛金に変わっている場合には、
商品自体を差押えることができなくなる代わりに、
売掛金を差押えることができるのです。
自分の納入した商品が、
どこに売却されているか掴んでおくと
先取特権の行使に役立ちます。
先取特権は強力な権利ですが、
相手が商品を第三者に売却し
その代金を回収してしまうと行使できなくなりますから、
早急に手続きを取る必要があります。
■今週の宿題 ■
Aが取引先Bに対し100万円の売掛金を持っています。
取引先Bがお金を持っていないけれども
Cに対して売掛金100万円を持っていた場合、
AはBに代わって、Cに対し
Bの100万円の売掛金請求権を行使することができる。
○でしょうか? ×でしょうか?
お答えをお待ちしております。
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