第115回
いよいよ秒読み開店へ その5
15日前 鬼専務と再度家賃交渉 決め手は以外にも!

いよいよ店舗の内装工事も
最終仕上げの段階に入りました。
四本さんもこの所つきっきりで
内装工事の陣頭指揮をとっています。
来週からはスタッフミーティングも始ります。
しかしその前に、松井さんにはもう1つ
どうしてもやっておかなければならない事がありました。
そうです、会社に支払う家賃の事でした。

前回は、あの鬼専務との打ち合わせで
本部費の計上で1本すでに取られています。
再度家賃交渉をする際には、
自分の提案を裏付ける余程の資料を持って
準備をしなければ相手にされません。
そろそろ準備をしなければと思っていた時、
鬼専務から松井さんに連絡がありました。
至急会いたいと云うのです。

もちろん何の準備のないまま松井さんは
鬼専務の所に行くと、
何と用件は家賃の事だったのです。
恐る恐る話を聞くと、
何と坪当りの家賃を3年間、
月額2万5千円払えば良いと云うのです。
40坪の店ですから月額100万円で良いのです。
松井さん拍子抜けしました。
何でこの様な条件を今ごろ出してくれたのか。
始めからそれで決めてくれていたらと
逆に腹が立った位です。

専務の話はこうでした。
今回の内装工事の内訳を見ると、
設備工事に含まれる給排水工事
(店内まで水を引込む工事や排水をする工事)
空調機器の増強と補修については、
本来なら親会社が設備投資をしてから、
松井さんに物件を貸すという形が
正式の賃貸借の契約になるはずだが、
今回はこれを全て松井さんの所が負担している。
つまり、厳密に云うと正しい契約にはならない。
だから、松井さんが負担した設備投資費用を
3年間で分割した分を家賃から差し引くと云うのです。

なんと云う鬼専務か。
呼び出されたときは、
結局は交渉ではなく通告ではないかと思い、
松井さんは再度新しい条件で専務と話すつもりでした。
しかし鬼専務の顔を見て松井さんはその話をやめました。
あの鬼専務の目から涙が流れているのです。
「よく1人で頑張った。
これからが本当のビジネスがはじまるんだよ」
と云っている様に松井さんは感じたからです。



『指導者に求められるのは自己への厳しさと
人への優しさである』


←前回記事へ 2003年7月30日(水) 次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ