第986回
一枚の写真が私の転機を思い起こしてくれました
北京セミナーの三番手のスピーカーとして
私が話をさせていただきました。
セミナー前の打ち合わせで、
一番手の日高さん、二番手の柳田さんに、
転職や独立といった話をしていただくことを
事前に知ることができましたので、
私は、ささやかながらも
中国の発展にお金を賭けてきた“投資家”として
話をさせていただくつもりでした。
事実、三全公寓を訪れ、部屋に泊まり、
またマンション内で食事をするなかで
私の中に浮かんできたのは
第3回目の中国投資考察団で
更地だったこの地を訪れたとき、
邱さんが楽しそうにされていた姿です。
邱さんは、部下の方をそばにおいて
「ここに外人居住用のマンションを建てるんですよ」
と説明してくれました。
そんな邱さんに、
私は皆が知りたがっているだろうと思って
「先生、東京の友人たちに説明するとき、
北京のマンションは
どういう場所に建つと言えばいいんですか」
と質問しました。
即座に邱さんから「お堀端!」
という答えが返ってきました。
それから4年ばかりの年月がたった
平成9年に三全公寓はできあがり、
念願の開業を果たします。
そして、部屋の貸し出しも始まりました。
またその前の年から
私は中国の会社の株も買うようになりました。
こうした体験やその間に勉強したことを
思うままに話をすれば、
30分や40分ならいくらでも話せると考え、
早々にセミナー会場になっているイタリア料理店
イル・ミリオーネを訪れ、
部屋に飾られた絵や写真を拝見しました。
そんな私の目のなかに邱さんご夫妻が
中国大使の阿南惟茂さんご夫妻と
一緒に並んだ写真が目の中に飛び込んできました。
日本と中国を行ったりきたりしている邱さんが
中国の地で建てられたマンション内のレストランに、
中国に駐在して日本外交を担う
最高責任者のご夫妻を招くという図は、
まったく自然で、何の不思議もありません。
ところが、私は中国大使の阿南さんの
お兄さんと縁があるんです。
阿南さんのお兄さんは
私が新日鉄に勤めていたときの上司で、
阿南さんが私に温情をかけてくださったことが
のちに私が邱さんの文章に接することにつながり、
多少、同期生たちとは異なる道を歩むことになります。
レストラン内に飾られたこの一枚の写真を見て、
私は自分がたどってきた道を思い出し
今日は、予定を変えて、
そのことを話すことにしました。
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