第977回
天安門上のビデオにすっかり見とれました
北京の名所、天安門をくぐって、
故宮を目指そうとすると、
一緒だった義理の兄が
「せっかくきたんだから、門に登ろう」
と言いました。
「それもそうだね」と相槌をうち、
数人の人たちと一緒に、天安門に登りました。
天安門の上に行くまでに、
さして時間はかかりませんでした。
門の上に立つと、
さきほど歩いてきた広場が一望できます。
稀有壮大な気持ちになって
勝手なパフォーマンスをする人も
いるのでしょうか?
そういった行動を未然に防ぐため、
公安の人がずらりと並んでいました。
見物する人の歩みにしたがって前に進むと
一つのところで、大勢の人が立ち止まっています。
なんだろうかとのぞくと、ビデオの放映です。
毛沢東が出てきます。
ケ小平も出てきます。
そして江沢民が出てきます。
この天安門と広場で演じられた演説や
軍事パレードの記録をまとめたビデオです。
どこかで見た映像ではありますが
映像が撮られた現地で見ると、
臨場感があり、迫まってくるものがあります。
あとで調べたことを交えて言えば、
毛沢東が登場した映像は、
1949年(昭和24年)の10月1日に
共産党が中華人民共和国の建国を
宣言したときの光景です。
中国ではこの日を記念して、
10月1日が国慶節という祝日になりますが、
ケ小平が登場するのは、1984年(昭和59年)、
建国35周年の国慶節の天安門広場で
軍事パレードを閲兵するときの光景です。
そして江沢民がでてきた映像は、
それから15年たった1999年(平成11年)、
建国50周年の国慶節に行われた軍事パレードです。
ああ、中国はこういう歴史を経て、
今に至ったのだなあと思うと
何か感動めいたものを感じます。
とくに、パレードのなかで、
中国国歌の「義勇軍行進曲」が流れてくると
心に響くものがあり、
その場を離れられなくなりました。
「戸田さん、戸田さん、もう行きますよ」と
うしろから友人に、ポンポンと肩をたたかれ、
ようやく、ビデオの前を離れることができました。
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