第941回
「取締役会で全員賛成するような新規事業はやるな」
私は福岡県の北九州市で
わりに人通りのある場所に、
お年寄り向けのマンションを建てる事業プランが
魅力的に思えたのですが
周囲から、
「やめておいたほうがいいんじゃないの」
と反対されて孤立しました。
その孤立は
どういう性質のものだったのでしょうか、
邱さんは昭和47年の時点で刊行された
『成功の法則』のなかで
次のようにお書きになっています。
「常識に従うな。
―取締役会で全員賛成するような新規事業はやるな―
常識とは過去の体験によって
積み上げられたものであり、
過去および現在、
私たちの周辺に起こっている事柄から教わったことを
基準にした物の考え方であります。
そうした常識の持ち主たちは、
新しいアイデアが提起された場合、
自分らの持ち合わせている常識をもとに
是非を判断します。
したがって取締役の大部分が賛成することは、
大部分の人にとって常識化していることであり、
全員が賛成することは
知らない人がいないということである。
この意味で、新規の事業を始める時は、
もし取締役会にはかった場合、
全員賛成するようなことが起こったら、
見合わせた方がよろしいと思います。
ほんの数人しか賛成しない場合は、
少し時期が早いということですから、
苦労を覚悟する必要があります。
たとえば4対6の少数意見になったときが、
おそらく一番やりがいのあるタイミングです。
ただし、そうは言っても、事業そのものが
未来の社会的なニーズにマッチしたものであることが
前提になることは言うまでもありませんが・・・」
(『成功の法則』)
この言葉は以前にも引用させていただきましたが、
私が直面したことについて、
あまりに見事に分析、整理していただいているので、
再度引用させていただきました。
私は邱さんの予言どおり、
苦労を強いられました。
ただ苦労はしましたが、
この事業は成功裏に立ち上がり、
いまも生き続けています。
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